長旅は承知! それでも訪ねたい離島、ベスト10
日本には実に6800以上の島がある。あなたはいくつ訪ねたことがあるだろう。旅情を誘う美しい海と人々の暮らしぶり。ガイド本などがあまり取り上げない島にも魅力的なところは多い。そこで島旅の達人に、長旅にはなるが、一度は行っておきたい離島を選んでもらい、ランキング化した。
歩くほどに魅力発見
上位には青ケ島や硫黄島など手つかずの自然や景観に恵まれた島々が並んだ。観光地化が進んでおらず宿泊施設などは十分とはいえないが、人々に接しやすく島暮らしを堪能できる。船旅には欠航のリスクがあるが、経由地から飛行機やヘリの定期便があるところも多い。
島旅はどうすればより楽しめるか。日本の有人島すべてに足を運び、今月「島の博物事典」(成山堂書店)を出版する写真家の加藤庸二さんは「島内はなるべく歩く。地元の人たちとの会話から楽しみ方がどんどん広がるはず」と話す。無論、島民生活への配慮は欠かせない。
ランキングに入らなかったが「食やアートによる島興しが活発な瀬戸内の島々も魅力は十分」(日本離島センター)。今夏は今まで知らなかった日本の島旅、検討してみてはいかが。
星空の下 特産の焼酎で乾杯
「ひんぎゃの塩作りやサウナ入浴、蒸気によるバーベキューなど地熱を生かした工夫や楽しみがいろいろある」(古賀学さん)。島特産の焼酎「青酎」(あおちゅう)が簡単に手に入るのもうれしい。半面、定期船は欠航が多く、就航率が5割を切る月もある。八丈島からヘリコプターで行く方が確実だ。(1)八丈島底土港から定期船で三宝港へ約3時間(2)青ケ島村役場(電)04996・9・0111
岩場に露天・赤い海…驚きの連続
「地球の鼓動を感じられる島。港内は赤い鉄さび色で海は青いという思い込みをひっくり返される」(今村治華さん)。「とにかくびっくりが連続の島」(斉藤滋さん)などと高い評価を得た。ギニアの太鼓ジャンベの学校があり、海外から訪れる人も多く「国際的な雰囲気がある」(大矢内生気さん)。(1)鹿児島本港からフェリーで硫黄島港へ約4時間(2)三島村観光案内所(電)09913・2・2370
鍾乳洞 まるで輝くシャンデリア宮殿
(1)那覇からフェリーで約13時間、那覇空港から飛行機で約1時間(2)南大東村観光協会(電)09802・2・2053
奄美大島の南、海峡を渡ってたどりつく。「穏やかな雰囲気を味わえる美しい島。静かな海を渡っていく景色の変化も楽しい」(河田真智子さん)。海岸線が入り組み、浦々に美しい砂浜と約30の集落が点在する。「集落は少しずつ雰囲気が違う。難読な集落名も深さを感じる」(カベルナリア吉田さん)。旧暦9月9日(今年は10月21日)に行われる郷土芸能「諸鈍シバヤ」は奄美の原風景が感じられる行事だ。
(1)奄美大島・古仁屋港からフェリーで生間港へ20分(2)瀬戸内町観光物産協会(電)0997・72・4567
新潟県村上市から35キロほど沖にある。夏は海水浴や奇岩巡りなど楽しみが多い。漁業が盛んで2隻の船で行う大謀網漁は船上から見学できる。ぜひ食べてほしいのが名物「わっぱ煮」。新鮮な魚やネギ、味噌、水を入れた木の容器「わっぱ」に、焼いた石を入れて煮立てて食べる「見た目も楽しい海の男の料理」(黒岩正和さん)だ。牧場体験やエコツアーも人気がある。(1)岩船港から高速船で粟島港へ55分、普通船は約90分(2)粟島観光案内所(電)0254・55・2146
五島列島北部の島。「漁師仕事や郷土料理づくりが体験できる民泊プログラムが豊富」(鯨本あつこさん)。「教会や再生した古民家、牧歌的な風景がすばらしい」(古賀さん)。(1)佐世保港から高速船で小値賀港へ1時間半(2)おぢかアイランドツーリズム(電)0959・56・2646
伊豆諸島のひとつで、海の中から湧く天然の湯を満喫できる。「海水浴や森林散策、新鮮な魚料理など魅力がギュッと詰まっている」(箭内博行さん)。(1)東京・竹芝桟橋からジェットフォイルで野伏港へ3時間15~30分、大型船は約9時間(2)式根島観光協会(電)04992・7・0170
日本最西端。「雄々しい景観やヨナグニウマ、海底遺跡クルーズなど楽しみは多彩」(今村さん)。(1)那覇空港から飛行機で1時間半(2)与那国町役場(電)0980・87・2241
日本最南端の有人島。「思わず叫んでしまうくらい美しい海」(今村さん)。(1)石垣島離島桟橋から高速船で約1時間(2)竹富町観光協会(電)0980・82・5445
三島由紀夫の小説「潮騒」の舞台。(1)鳥羽マリンターミナルから定期船で約40分(2)鳥羽市観光課(電)0599・25・1157
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表の見方 数字は選者の評価を点数化した。名称、カッコ内は所在地、(1)主なアクセス(2)問い合わせ先 写真は1~5、7位は加藤庸二さんが撮影、6位はおぢかアイランドツーリズム提供。
調査の方法 日本離島センターや専門家の協力を受け、大都市(札幌、東京、名古屋、大阪、福岡)からの飛行機の直行便がなく、旅先としてあまり知られていないが、魅力的な国内の離島約50カ所をリストアップ。12人の専門家に(1)文化や自然、景観などみどころがある(2)着いた時の感動や驚きが大きい(3)独特の雰囲気や島民との交流が味わえる(4)島の食べ物を味わい名産品を買える――などのポイントをふまえ、読者にぜひ訪れてほしい離島を10位まで選んでもらった。選者は以下の通り(敬称略、五十音順)
▽鯨本あつこ(離島経済新聞編集長)▽今村治華(フリーライター)▽大矢内生気(離島政策文化フォーラム事務局長)▽加藤庸二(写真家)▽カベルナリア吉田(紀行ライター)▽河田真智子(島旅作家)▽黒岩正和(写真家)▽古賀学(松蔭大学教授)▽斉藤滋(クラブツーリズム地域交流部顧問)▽斎藤潤(フリーライター)▽菅田正昭(民俗宗教史家)▽箭内博行(写真家)
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