小説で読みたい 名作SF映画、ベスト10
近年、「猿の惑星」や「スター・トレック」など往年のSF映画が相次ぎ再び製作されている。今年も「ターミネーター」(7月)、「ジュラシック・ワールド」(8月)、「スター・ウォーズ」(12月)と、話題の大作が続々公開される。
ひと味違う個性に浸る
これらの作品は設定やストーリーを改編し、新しい魅力をもたせるのが常。そうなると、もとの小説がどんな内容なのかも気になるところだ。
原作が面白く、新たな魅力を発見できるおすすめ作品はどれか。劇場用長編として公開され、原作が入手しやすいものから、SF映画・小説に詳しい専門家に選んでもらった。
上位を占めたのは今も高く評価される不朽の名作ばかり。いずれも映画と原作の設定こそ共通しているものの、監督と作家それぞれの個性が鮮明で、どちらも楽しめる。
「原作のどこを変えたことで映画が面白くなったのか、考える楽しみがある」と映画評論家の添野知生さん。映画では分かりづらい部分が、原作を読むと納得できる作品もある。小説には遠い昔や非日常の世界に、より深く浸れる面もある。
なお、日本の作品は10位以内に入らなかったが、筒井康隆原作のアニメ「パプリカ」(2006年)が最も支持を受け、小松左京原作の「復活の日」(1980年)が続いた。
人間とは何か問う、斬新で奥深い
(1)1982年(2)リドリー・スコット(3)ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント(ファイナル・カット)、1543円(4)フィリップ・K・ディック(5)早川書房、799円
読みどころ 映画では削られている近未来の風習や宗教、感情制御装置などの小道具が興味深い
進化のストーリー、緻密につづる
読みどころ 小説は詳細で緻密。「映画の後半にモヤモヤする人は、読んでスッキリしよう」(高橋良平さん)
哲学的な世界観 論理的に迫る
読みどころ 原作は「ソラリス学」なる架空の学問を設定し、起きる現象に論理的に迫る。その世界に没入できるか
19世紀が舞台 古典の魅力詰まる
読みどころ SF小説の父による古典。21世紀の怪獣映画との表現のギャップが新鮮
映像と原作 全く違う路線
読みどころ 「映画版の描写はかなり毒があるので、原作を先に読むのがおすすめ」(塩沢快浩さん)
南極に出現した変幻自在の宇宙人と観測基地の隊員が戦うホラー。目の前にいる仲間は本物の人間か、宇宙人か。緊迫感みなぎる筆致のサスペンスで、1951年、82年、2011年の3度映画化された。「原作の恐怖にいちばん近いのは82年版」(添野さん)。(1)1982年(2)ジョン・カーペンター(3)ジェネオン・ユニバーサル、1543円(4)ジョン・W・キャンベル(5)東京創元社、1296円
「惑星ソラリス」のタルコフスキー監督が再びSFに挑んだ映画は「美しく陰鬱」(河野晴香さん)。原作は「謎めいた映画より、だいぶわかりやすい」(菊池さん)。(1)1979年(3)キングレコード、4104円(10日発売)(4)アルカジイ&ボリス・ストルガツキー(5)早川書房、864円
過去と未来を行き来し、人生の断片を何度も過ごす羽目になる米国兵の物語。映画と原作ともに「残酷な運命を苦いユーモアをこめて描き出す手法は共感を誘う」(高槻さん)。(1)1972年(2)ジョージ・ロイ・ヒル(3)キングレコード、2052円(4)カート・ヴォネガット・ジュニア(5)早川書房、778円
宇宙船が不時着した惑星は猿が支配していた。原作と映画の結末は大きく異なり「どう改編されたかに着目したい」(井口健二さん)。(1)1968年(2)フランクリン・J・シャフナー(3)20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン、1533円(4)ピエール・ブール(5)早川書房、821円
数奇な人生をたどる青年が偶然会った男と時空を超えた旅に出るタイムトラベル小説。(1)2014年(2)マイケル&ピーター・スピエリッグ(3)ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント、4093円(DVD&ブルーレイセット、7月15日発売)(4)ロバート・A・ハインライン(5)早川書房、972円
表の見方 数字は専門家の評価を点数にした。映画タイトルと原作(1)映画公開年(2)監督名(3)DVDの発売元、税込み価格(4)原作者(5)原作の版元、税込み価格
調査の方法 専門家の協力を得て、原作が入手しやすく、劇場でも評価を得た長編SF映画60本をリスト化。映画と原作のどちらも優れている、違いを比べて楽しめる、などの点からおすすめを10位まで順位付けしてもらった。選者は次の通り(敬称略、五十音順)
井口健二(SF映画評論家)▽河野晴香(SHIBUYA TSUTAYA)▽菊池誠(物理学者)▽三丸晋(MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店)▽塩沢快浩(早川書房「SFマガジン」編集長)▽須川賢一(WOWOW映画部)▽添野知生(映画評論家)▽高槻真樹(映画・SF研究者)▽高橋良平(SF評論家)▽山口友章(ゲオ事業企画部)
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