南米やアフリカなど意外な国のワインの存在感が高まっている。伝統国に劣らぬ味わいがありながら割安なため、楽しむ人は多い。ただ、輸入量が少なく、国の特色や銘柄は知られておらず、選ぶ際は悩みがちだ。
3000円で味わう世界旅行
そこで輸入量上位のフランス、チリ、イタリア、スペイン、米国や伝統的な生産国以外から輸入されたワインのうち、3000円程度までのお薦め銘柄を、味わいとユニークさでランキング化した。
上位に並んだのは南米やオセアニア産。白では南アフリカやカナダ、日本産も入った。アルゼンチンならマルベック、南アフリカはシュナン・ブランなど各国のブドウ品種を使ったものも評価された。
これらの国のワインは千円台でも十分楽しめるものが多い。タイプも、香りが強いパワフルなものから繊細な果実の味わいを生かしたものまで、幅広くそろってきている。
世界的なワイン人気で中国やインドなども生産を拡大させている。世界を旅する気分で様々な国の味を楽しめる時代が来つつある。まずはランキングを参考に新しい国の味に挑戦。お気に入りの1本を見つけてはいかがだろう。
<白>
1位 ボーモン・ホープ・マルゲリート シュナン・ブラン(南アフリカ) 1790ポイント
リッチな蜂蜜の香り
南アフリカはワイン新興国と思われがちだが、生産は300年の歴史がある。評価が高いのが蜂蜜や花の香りが特徴的なシュナン・ブランで造られたもの。喜望峰近くのボーモン・ワイナリーが生産したこの1本もシュナン・ブランだけで造った。
「アカシアの蜂蜜の香りがリッチでふくよか」(柳忠之さん)、「熟した果実の心地よい香りに、ナッツのような香ばしさも感じられる。酸味も乗っていてワンランク上のワイン」(松浦尚子さん)などと、フランスなどの伝統国産に負けないバランスの良さと洗練された印象に評価が集まった。
和洋中を含め様々な料理との相性の良さを指摘する声も目立った。家庭料理と合わせれば、食事の時間自体をワンランクアップさせてくれる1本とも言えそうだ。(1)2012(2)南アフリカ・ウォーカーベイ(3)2786円(4)ヴィノスやまざき(電)0120・740・790 2位 トーズワイナリー スケッチズ リースリング(カナダ) 1550ポイント
冷やすとおいしい
手摘みのリースリングを使った自然派ワイン。「香りがきれいに出ていて素直にうまい」(葉山さん)、「青リンゴ、レモンの皮のような風味とほんのり残る甘さ。冷やすとおいしい」(沼田さん)など夏向きとの評価が目立った。酸味や甘さがやや強く、女性は喜ぶとの声も。女子会の手土産によさそう。(1)2013(2)カナダ・オンタリオ州VQAナイアガラ・ペニンシュラ(3)2990円(4)カナダ産ワイン専門 ヘブンリーバインズ(電)03・5773・5033 3位 サルトン クラシック シャルドネ(ブラジル) 960ポイント
マリネに合う
ワイン生産を急拡大しているブラジルの1本。「複雑な香りと芯の通った味わいでバランスが良い」(長谷川純一さん)と好評。「キュッとしまった酸が心地よい。少し熟成させてもおもしろい。レモンやライムのマリネなどに合う」(本多さん)、「メーン料理に合わせたい厚みを備えている」(松浦さん)との評価も。ハレの日の食事に合わせたい1本だ。(1)2012(2)ブラジル・リオグランデ・ド・スル州(3)2890円(4)世界のワイン 葡萄屋(電)045・511・3067 4位 ヴィラ・マリア・マールボロ・プライベートビン・ソーヴィニヨン・ブラン(ニュージーランド) 870ポイント
軽快、夏向き
「典型的なソービニヨン・ブラン。さわやかで最後に甘みもあり、万人受けするスタイル。軽快なので、夏がベストシーズン」(松浦さん)、「フレッシュハーブを添えたカルパッチョと合わせて楽しみたい」(鶴見明さん)。(1)2014(2)ニュージーランド・マールボロ(3)1382円(4)楽天市場(うきうきワインの玉手箱(電)073・441・7867) 5位 トメロ・シャルドネ(アルゼンチン) 710ポイント
ふくよかなボディ
「リッチな香りで、余韻が楽しめる1本」(長谷川さん)。「複雑で果実味も豊か。バランスの良い味わいでコストパフォーマンスは高い」(林さん)、「バターナッツのニュアンスに、ふくよかなボディ。酸度が高いこともあり、楽しく味わえる」(本多さん)。(1)2013(2)アルゼンチン・メンドーサ州(3)2138円(4)ヴィノスやまざき 6位 奥出雲ワイン シャルドネ(日本)
(1)2013(2)島根県(3)3240円(4)奥出雲葡萄園(電)0854・42・3480
7位 パイクス トラディッショナル リースリング(オーストラリア)
(1)2014(2)オーストラリア・クレア・ヴァレー(3)2916円(4)ヴァイアンドカンパニー
8位 リッチランド・シャルドネ(オーストラリア)
(1)2014(2)オーストラリア・グリフィス(3)1382円(4)ヴィノスやまざき
<赤>
1位 カベルネ・ソーヴィニヨン・レゼルヴァ ボデガ・ノートン(アルゼンチン) 1690ポイント
味わい豊かで優雅
上位を占めたアルゼンチンの代表的産地、メンドーサ州はアンデス山脈からの風とミネラル豊富な雪解け水に恵まれている。標高が高いため昼夜の気温差が激しくワイン造りに適している。ボデガ・ノートンはクリスタル・ガラスで有名なスワロフスキーが所有するワイナリーが、カベルネ・ソーヴィニヨンで造った1本。「女王の高貴さを感じる」(葉山考太郎さん)などと多くの選者が上位に選んだ。「きれいな香り。凝縮感の中に透明感もある」(小松由加子さん)、「味わい豊かでエレガント。バランスがよく美しい熟成。さらに寝かせても楽しめる」(林やよいさん)と味わいの深さに加え、「丁寧で志高く作られていて複雑。このコストで飲めるのは素直にうれしい」(本多康志さん)と価格面での評価も高かった。(1)2011(2)アルゼンチン・メンドーサ州(3)2052円(4)エノテカ(電)0120・81・3634 2位 ペピック ピノ・ノワール ジョセフ クローミー(豪州) 1190ポイント
上品さと風格
ワイン生産を手掛け、「タスマニアの父」とも称されるジョセフ・クローミーのブランドの1本。「ピノノワールの上品さと風格が備わっている」(葉山さん)など、選者の多くが高評価。「価格以上のクオリティーが楽しめる」(久慈竜太郎さん)、「ラズベリーやハーブの風味と酸味が印象的。これはオススメ」(沼田実さん)。(1)2013(2)オーストラリア・タスマニア州(3)3132円(4)ヴァイアンドカンパニー(電)06・6841・3553 3位 アングロ・イノチェンティ・カベルネ・ソーヴィニヨン(アルゼンチン) 1130ポイント
香りさわやか
ウコヴァレーというアルゼンチンの山奥で造り続けてきた蔵元。手間暇をかけて手摘みした高品質のブドウの味わいが楽しめる。「メンソールのさわやかな香り。ワンランク上の造りを感じる」(松浦さん)。肉料理に特色があるアルゼンチン産らしく「熟成肉と合わせたい」などの声もあがった。(1)2012(2)アルゼンチン・メンドーサ州(3)2570円(4)ヴィノスやまざき 4位 カイケン・マルベック・レゼルヴァ(アルゼンチン) 1100ポイント
スパイシーで凝縮感
チリの高級ワインで知られるモンテス社が手掛ける、アルゼンチンのブドウ品種マルベックが堪能できる1本。「これからの季節にぴったり。スパイシーで凝縮感がある」(長谷川さん)、「バーベキューにおすすめ」(沼田さん)。コストパフォーマンスも高評価だった。(1)2012(2)アルゼンチン・メンドーサ州(3)1944円(4)エノテカ 4位 テ・マニア・ピノ・ノワール(ニュージーランド) 1100ポイント
バランス良好
フレッシュな果実味と酸味で、甘みとのバランスが評価を集めた。「苦みが不得意な女性にもよさそう。濃すぎないので日本の食事と相性が良い」(松浦さん)。軽く冷やすと赤身の魚にも合いそう、との声もあった。(1)2012(2)ニュージーランド・ネルソン(3)2700円(4)ヴィノスやまざき 6位 ビニャルバ・レセルバ・マルベック(アルゼンチン)
(1)2012(2)アルゼンチン・メンドーサ州(3)1922円(4)ヴィノスやまざき
7位 エステート・セレクション・ザ・プラトー・ピノノワールシレーニ・エステート(ニュージーランド)
(1)2013(2)ニュージーランド・ホークス・ベイ(3)3132円(4)エノテカ
8位 サルトン クラシック タナ(ブラジル)
(1)2011(2)ブラジル・リオグランデ・ド・スル州(3)2890円(4)世界のワイン 葡萄屋
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表の見方 数字は専門家の評価を点数に換算したもの。ワイン名(生産国)(1)収穫年(2)産地(3)税込み店頭価格や実勢価格(4)販売店など
調査の方法 ワインに詳しい専門家の推薦をもとに、輸入量上位5位のフランス、チリ、イタリア、スペイン、米国とドイツ、ポルトガル以外の国で生産された、3000円程度までのワイン40本のリストを作成。11人の専門家がブラインドで試飲し、味わいのユニークさ、ぜひ人に勧められるか、コストパフォーマンスなどの点で順位付けしたものを集計した。選者は次の通り(敬称略、五十音順)
▽漆谷剛(エノテカ シニアソムリエ)▽久慈竜太郎(リストランテ・エノテカ リヴァ デリ エトゥルスキ シェフソムリエ)▽小松由加子(季刊「ワイナート」編集長)▽鶴見明(ヴィノスやまざき店舗運営部部長)▽沼田実(テイスト アンド ファン代表取締役)▽長谷川純一(しゃぶ膳紫波 マネージャーソムリエ)▽林やよい(下北沢ワインラボ主宰 シニアソムリエ)▽葉山考太郎(ワインライター)▽本多康志(レストラン ファロ資生堂 シェフソムリエ)▽松浦尚子(サンク・センス白金ワインスクール&ショップ)▽柳忠之(ワインジャーナリスト)
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