魅惑の観光資源 夜景きれいな工場地域、東西20カ所
無機質な工場が、人気の夜景鑑賞の対象として定着してきた。過去には公害など負のイメージも持たれたが、今は環境対策が進み人々を魅了する観光資源になりつつある。そこで専門家におすすめの都市と主な鑑賞スポットを選んでもらった。
<東日本>
全国屈指の規模、迫力満点
また「近くの川崎マリエンの展望室からは工場群を見渡せる」(中村勇太さん)ほか浮島町の夜景は迫力満点で「煙突から上がる炎や特徴的な幾何学的形態の化学プラントなど景観の要素もバラエティーに富む」(岡田さん)。市民ガイドが同行するツアーやクルーズも人気だ。(1)JR川崎駅から市バスで30~40分(2)終日利用可
橋とのコラボ
2014年11月にJX日鉱日石エネルギーの集合煙突の点灯が始まり、魅力を増した。潮見公園展望台からは「鉄のまち室蘭」を象徴する新日鉄住金の工場群とその手前の街並みが見渡せる。白鳥大橋や祝津公園の展望台もおすすめ。「夜景マップなど夜景情報も充実している」(縄手真人さん)(1)道央自動車道室蘭ICから車で約10分(2)終日利用可
千葉市街や東京湾を中心に製鉄所などを地上113メートルの展望室で楽しめる。「白色ではなくオレンジ色に輝く工場夜景が魅力」(丸田あつしさん)(1)JR千葉みなと駅から徒歩12分(2)10~5月は午前9時~午後7時、6~9月は午後9時まで。入館料420円
夕暮れや満月の夜、富士山を背景に「これほどインパクトのある工場夜景は世界でここだけ」(岡田さん)。比奈地区や宮島地区などでは間近に鑑賞できるところも多い。
鹿島臨海工業地帯の「間近に見上げる大規模な石油化学プラントが圧巻で製鉄所の高炉群も存在感がある。時折燃え上がる炎も迫力がある」(大倉さん)。外灯も設置された。
「工場が、駅舎裏の山の斜面を覆い尽くす不思議な光景」(小林さん)だ。
「製油所のプラントは臨場感がたっぷりでパワフルな印象」(丸々さん)
「360度パノラマの中に浮かび上がる工場夜景」(縄手さん)
高台にある「グレットタワーみなと」からの火力発電所や魚市場が見どころ。
首都圏にエネルギーを供給する工場が多い。約25メートルの展望塔もある。
<西日本>
眼下に広がるコンビナート
スカイライン以外にも「海岸沿いに走る国道430号を中心に、間近に工場を見られる場所も多い。一日ではまわりきれない充実した工場群」(大倉裕史さん)。予約して中を見学できる工場が多いのも魅力だ。(1)瀬戸中央自動車道水島ICから車で約15分(2)終日利用可
地上100メートルから鑑賞
霞ケ浦緑地公園や大正橋といった地上や水上クルーズなど「多様なビューポイントと光のボリュームが魅力」(八馬智さん)。(1)JR富田浜駅から徒歩約15分(2)午前9時半~午後5時(土曜と7~11月の金曜は午後9時)。水曜と12~6月の月曜休み。入館料300円
石油化学を中心に鉄鋼、セメントなど多彩な工場群やクレーンが立ち並ぶ周南コンビナート。水面に映る工場群の明かりが美しい。初めてでも安心して訪問できる。徒歩で渡れる周南大橋からの眺めもよい。(1)JR徳山駅から徒歩約15分(2)終日利用可
亀居城跡から石油化学や製紙関連の工場群を望む。「山口県岩国市の工場夜景まで大パノラマで一望できる」(本田純一さん)。市のホームページ情報も充実。
堺市や高石市、泉大津市などに広がる堺泉北臨海工業地帯の間近を走る阪神高速湾岸線は「日本で最も動的な夜景。これほど連続的に展開する工業景観は他にない」(岡田さん)。
「高台からの眺めは、撮影する場合も面白みがある」(丸田さん)
瀬戸大橋と工場夜景のコラボ。より間近で見るなら瀬戸大橋記念公園で。
近代製鉄発祥の街。「工場と共存する歴史を垣間見られる」(本田さん)
瀬戸内海に面した製紙工場群は「遠めにも存在感」(中村さん)。
「自然と人工物の共演が不思議な景観」(丸々さん)
表の見方 選者の評価を点数化。都市・鑑賞スポット名(1)主なアクセス(2)施設情報。写真は西日本は丸田あつし氏撮影、東日本2位は室蘭観光協会提供
近くで見るスケール感
夜景評論家の丸々もとおさんは「不規則な光が想像力をかき立てる。百人百様、自分の言葉で表現したくなるはず」とその魅力を話す。ひとつひとつの光や炎に工場の安全や環境を守る役割があり、日々の生活とつながっていると思うとさらに感慨が増す。
工場地帯は広く、鑑賞スポットが多くあるため、ランキングは都市名と代表的な地点で示した。安全面や交通の便を考慮した結果、掲載したところは工場からやや離れている場合が多い。
ただ、近畿大学の岡田昌彰教授は「工場近くから見るスケール感、金属の光沢や質感も醍醐味」と話す。工場敷地や私有地に勝手に入らないほか、車両の往来や駐車場所などにも十分な注意が必要だ。鑑賞ツアーやクルーズに参加して、海上や通常は立ち入れない場所から楽しむのもまた格別だ。
◇ ◇ ◇
調査の方法 専門家の協力を基に工場夜景で有名な全国34都市の鑑賞スポットを選出。(1)夜景の美しさや迫力(2)鑑賞スポットの充実度(3)交通の便のよさ、施設の利便性(4)ツアーや情報の充実度などの点からおすすめを東西各5位まであげてもらった。選者は以下の通り(敬称略、五十音順)
▽岩崎拓哉(夜景写真家、オールアバウト夜景・イルミネーションガイド)▽大倉裕史(写真集「工場夜景」アドバイザー)▽岡田昌彰(近畿大学理工学部社会環境工学科教授)▽小林哲朗(写真家、「工場ディスカバリーZ」著者)▽中村勇太(夜景写真家、夜景総合サイト「夜景FAN」運営)▽縄手真人(新日本三大夜景・夜景100選事務局)▽八馬智(千葉工業大学工学部デザイン科学科准教授)▽本田純一(写真家、「九州・山口工場景」著者)▽丸田あつし(夜景フォトグラファー)▽丸々もとお(夜景評論家)
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