真冬でもぽかぽか、温室のある植物園 ベスト10
大寒は過ぎたがまだ寒く、屋外のレジャーから足が遠のきがち。だが熱帯のカラフルな花々や砂漠の珍しい樹木が生い茂る温室の植栽が充実した植物園ならコートを脱いで楽しめる。今回は温室があり、見応えのある植物園を専門家に選んでもらった。
1万2000種、親切な見ごろ情報
2月には早春の草花の展示があり、つばき園など屋外の見どころが増えてくる。「毎週ウェブで更新される見ごろ情報が詳細で親切」(河野まゆ子さん)。洋ラン展は30日~2月8日。(1)開園は午前9時~午後5時、温室は午前10時~午後4時、年末年始(2)一般200円、高校生150円、中学生以下無料。温室観覧料が別途必要で、入園料と同じ(3)京都市営地下鉄「北山駅」すぐ(4)(電)075・701・0141
丁寧な館内ツアーに定評
アテンダントが来園者と一緒に館内を巡る「フラワーツアー」は「丁寧でわかりやすい」(下村孝さん)のでぜひ参加したい。クイズラリーや体験を重視した企画も充実しており、家族連れにお薦めだ。24日からは特別展「カカオとコーヒー おいしい関係」が始まる。期間中にはミニ講座やチョコレート作り体験も。(1)午前10時~午後5時、月曜(2)500円、中学生以下無料(3)大阪市営地下鉄「鶴見緑地駅」から徒歩約10分(4)(電)06・6912・0055
学ぼう 植物学の基礎知識
温室は2010年に改装し「熱帯の暮らしと植物」などテーマ別ゾーンがある。2月7日から開くラン展では、東南アジアなどに分布する大きな花びらが美しいバンダとカトレアが主役を飾る。期間中に温室に出店するカフェではラン科のバニラを使ったスイーツも提供する。「フレンチレストランもあり、ゆっくりできる」(藤田雅矢さん)(1)午前9時~午後5時、年末年始(2)720円、高校生以下無料(3)JR高知駅から「MY遊バス」で約30分(4)(電)088・882・2601
多くの絶滅危惧種も栽培
「豊富な植物が世界の生態区別に展示され解説も充実」(尾崎章さん)しているほか、植物の美しさや見やすさにも定評がある。(1)午前9時~午後4時30分、月曜(2)310円、高校生以下無料(電)029・851・5159
ゴミ焼却のエネルギー活用
「オオハマギキョウ」など東京都の小笠原諸島の固有種なども多い。イベントも多彩で、春や秋は天井から設置したロープに登って植物を見下ろせる「空中散歩」=写真=なども人気だ。2月3日からのツバキ展では、伊豆大島のものなどが見られる。(1)午前9時30分~午後5時、月曜(2)250円(電)03・3522・0281
2000年に開館した。「1年を通してイベントが豊富で花の見せ方が見事。おしゃれな植物館」(須磨佳津江さん)、「植物の装飾は世界的にも評価が高く感動する」(大林修一さん)。2000種・2万株のランが彩る「淡路夢舞台ラン展2015」は24日~3月8日。(電)0799・74・1200
国内最大規模の温室は「同じ公園敷地内にある美(ちゅ)ら海水族館のにぎやかさとは真逆のゆったりした気分や静寂を味わえる」(富屋均さん)。常時2000株以上のランを展示している。冬のランの展示会でも国際的に有名だ。(電)0980・48・3624
1937年に開館した重要文化財の温室「前館」は改修中。見学ができる「後館」で熱帯の花木などを楽しめる。「広く落ち着いたたたずまいの中に施設が分散しているのもいい」(邑田仁さん)(電)052・782・2111
「手入れが徹底している。特に熱帯スイレンの栽培場がすばらしい」(山田さん)。(電)0557・23・1105
2012年11月に完成した大型温室は明るく、抜群の開放感。希少植物も多い。(電)03・3350・0152
世界の野生ランコレクションが充実。「園で育成したベゴニアも見もの」(藤田さん)(電)082・922・3600
表の見方 数字は選者の評価を点数にした。名称、所在地、(1)開園時間、休園日(2)入園料(3)主なアクセス(4)問い合わせ先 3~5位の写真は各施設提供
一足早く 春を探しに
1~2月にかけてはランを主体に展示する園が多く、色とりどりの花々を楽しめる。世界中から植物を探してくるプラントハンターの西畠清順さんは「植物園の温室は五感を存分に刺激してくれる」という。植物学者で東京大学名誉教授の岩槻邦男さんは「植物園は絶滅危惧種を保全する点などでも、重要な存在。植物の生態や環境に思いをはせてみては」とその魅力を話す。派手な仕掛けがあるわけではないが、じっくり楽しめるのが植物園のよさだ。
大規模な温室がある西日本の施設がランキング上位を占めたが、小規模でも個性的な園は各地にある。入園料が大人で数百円、中学生以下は無料と財布にやさしい施設が多い。ひと足早い春を探してみては。
日本最古は小石川
日本で最も古い植物園は「小石川植物園」(東京都文京区)だ。1684年に徳川幕府が設けた「小石川御薬園」がルーツで、現在は東京大学の施設で植物研究や教育の拠点。巨大な花が咲き、強烈な臭いを放つショクダイオオコンニャクを日本で初めて咲かせた。今回は温室が工事中のため改修中の神代植物公園(東京都調布市)とともに選考対象外としたが、再開を待ち望む選者が多かった。
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調査の方法 日本植物園協会(東京都北区)などの協力を得て国内で温室がある主な植物園を51カ所を編集部がリストアップし、(1)植物の種類や株数が豊富で知識を得られる(2)植栽や植物の展示方法が魅力的(3)冬季の企画やイベントが充実(4)園内でくつろげるスポットがある――などの観点から、読者にも足を運んでほしいおすすめ植物園を専門家に原則10位まで挙げてもらった。選者は以下の通り(敬称略、五十音順)
▽飯塚克身(日本植物園協会専務理事)▽岩槻邦男(東京大学名誉教授)▽大林修一(プラネット社長)▽尾崎章(熱帯植物専門店エクゾティックプランツ前代表)▽河野まゆ子(JTB総合研究所主任研究員)▽下村孝(花と緑の生活文化研究所)▽須磨佳津江(キャスター、NHK「趣味の園芸」元司会者)▽富屋均(温室史研究家)▽西畠清順(プラントハンター、そら植物園主宰)▽野村郁子(福岡植物友の会副会長)▽藤田雅矢(作家、植物育種家)▽邑田仁(東京大学大学院教授、小石川植物園園長)▽山田隆彦(日本植物友の会副会長兼事務局長)
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