1位は箱根・ポーラ 印象派楽しめるお薦めの美術館
芸術の秋、気持ちがほっと和む印象派の絵画を楽しめる美術館に足を運んではいかがだろう。国内にも印象派の名画はたくさんある。館内や周辺も含めて作品を満喫できるおすすめの美術館を専門家に選んでもらった。
森と光を感じながら
なかでも美術館の顔ともいえるのがルノワールの「レースの帽子の少女」=写真=で、少女の夢見るような表情や、柔らかなほお、帽子の豊かな質感に心を奪われる。
展示室には光ファイバー照明を採用し、7月のパリの夕暮れの光を再現したという。「どの作品も色の退色を感じさせないみずみずしさ、鮮やかさ。ショップは作品に関連したグッズが豊富」(重野佳園さん)
建物も個性的。大半が地下にあって森に溶け込みつつ、広いガラス窓から太陽が降り注ぐ。箱根の緑豊かな自然の中で印象派がこだわった光を存分に感じることができる。2013年「6番目の展示室」の森の遊歩道が完成。15年3月まで「紙片の宇宙」展を開催。(1)午前9時~午後5時、年中無休(2)1800円(3)箱根登山鉄道強羅駅からバスで約13分(4)(電)0460・84・2111
都会で満喫 上質コレクション
東京駅に近く「都会の中にありながらとても落ち着いた雰囲気で展示室はまるでコレクターの邸宅の一室のよう」(馬場典子さん)。1952年の開設以来続く土曜講座や学芸員のギャラリートークなど美術に親しんでもらう取り組みにも熱心だ。2015年5月からのビル新築に伴う休館を前に、同1月末から「ベスト・オブ・ザ・ベスト」展を開催する。(1)午前10時~午後6時(毎週金曜日は午後8時まで)、月曜休館(2)800円(3)JR東京駅(八重洲中央口)から徒歩5分(4)(電)03・5777・8600(ハローダイヤル)
西洋美術の殿堂
本館は近代建築の巨匠ル・コルビュジエの設計によるもので、世界遺産登録を目指している。(1)午前9時30分~午後5時30分(毎週金曜日は午後8時まで)、月曜日休館(2)常設展430円(3)JR上野駅(公園口出口)から徒歩1分(4)(電)03・5777・8600(ハローダイヤル)
近代美術館のルーツ
「児島が『日本の絵描きのために譲ってほしい』とモネと直接交渉して得た『睡蓮』を収蔵している」(洲之内啓子さん)。(1)午前9時~午後5時、月曜休館(2)1300円(3)JR倉敷駅から徒歩約15分(4)(電)086・422・0005
緑豊かな庭園
(1)午前9時30分~午後5時、月曜休館(2)展示内容によって変わる(3)京成電鉄京成佐倉駅とJR佐倉駅から無料送迎バスがあり、所要20~30分(4)(電)0120・498・130
瀬戸内海に浮かぶアートの島、直島に2004年に完成した。モネら3人の芸術家の作品のみを設置している。モネの最晩年の「睡蓮」5点を自然光のみで鑑賞できる。「光の推移を感じることのできる展示は印象派が追い求めたもの」(大月ヒロ子さん)。モネが作った庭園の草花にちなんだ「地中の庭」もある。(電)087・892・3755
西日本屈指の印象派コレクションを誇る。原爆ドームをイメージした外観で「円形の展示空間がユニーク」(重野さん)。必見の人気作はゴッホが死の約2週間前に描いた「ドービニーの庭」やルノワールの「パリスの審判」だ。(電)082・223・2530
緑豊かな天王山の中腹にあった山荘を改修して建てられた美術館。新館「地中館」のギャラリーの「モネの睡蓮に包まれる感覚がすばらしい」(大月さん)。(電)075・957・3123
ゴーギャンの「水飼い場」やモネの「アヴァルの門」など水に関連した作品が多い。絵画とともに美しい夕日も堪能できる。(電)0852・55・4700
常設展なら200円で、モネ、ルノワール、ピサロの作品などが見られる。モネの「ジヴェルニーの積みわら、夕日」は特に人気。2015年4月10日まで改修工事中。(電)048・824・0111
表の見方 数字は選者の評価を点数にした。美術館名、所在地、(1)開館時間と休館日(2)大人1人の入館料(3)主なアクセス(4)問い合わせ先 写真は各美術館提供、制作年と絵の種類など
建物やショップも楽しんで
印象派はフランス・パリから生まれた。東京大学大学院の三浦篤教授は「都市の生活や風俗、近郊の自然など、印象派の画家らが描いたテーマは現代を生きる私たちにも身近で共感を覚える」と解説する。
ランキングではモネの「睡蓮(すいれん)」を看板作品とする美術館が目立った。モネはスイレンを題材に200を超す作品を描いたという。
実践女子大学の六人部昭典教授は「印象派の名品がそろう美術館の多くは建物や周囲の自然も素晴らしい。カフェやショップも含めてゆっくり鑑賞してほしい」と話す。
作品は企画展で貸し出されることも多いので、展示の有無は事前に確認しておこう。2015年1月12日まであべのハルカス美術館(大阪市)では印象派のモネからスーラなどを紹介する「新印象派―光と色のドラマ」展を開催している。
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調査の方法 印象派の絵画を所蔵する全国の美術館で、名画とされるものを持つ42カ所を編集部が専門家の協力をもとに選出。印象派画家にはポスト印象派や新印象派も含む。42カ所から選者に(1)見応えのある名画があり、作品数が充実している(2)展示手法や建物の構造に印象派の絵画を生かすこだわりがある(3)美術館の庭園や周辺で印象派作品を感じさせる工夫がある(4)ミュージアムショップのグッズが充実し、余韻にひたれるカフェやレストランがある――といった観点から、読者にお薦めの美術館を原則10位まで順位付けして選んでもらった。選者は以下の通り(敬称略、五十音順)
浦島茂世(オールアバウト「美術館」ガイド)▽大月ヒロ子(ミュージアム・エデュケーション・プランナー)▽岡部あおみ(美術評論家)▽重野佳園(美術ライター)▽洲之内啓子(ウェブサイト「今見られる全国のおすすめ展覧会100」主宰)▽高橋信裕(常磐大学コミュニティ振興学部教授)▽中村剛士(美術ブログ「青い日記帳」主宰)▽馬場典子(ぴあmook「日本の美術館ベスト250完全案内」編集長)▽三浦篤(東京大学大学院総合文化研究科教授)▽六人部昭典(実践女子大学文学部教授)
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