知ってるようで知らないカタカナ語 ベスト10
世の中にあふれるカタカナ語に戸惑う人は多いはず。知ったふりでやり過ごしたこともあるだろう。「聞いたことはあるが意味が分からない」カタカナ語や英文字略語についてネットで聞いたところ、日ごろ見聞きする言葉がずらりと並んだ。
「要求があればすぐに」の意味。版をつくらずに思い立ったらすぐに印刷できるオンデマンド印刷といった具合に出版や印刷業界でよく使われてきた。最近は放送局がドラマや映画などをネットなどを通じて配信する「オンデマンド配信」が増えてきた。※「注文対応」「受注対応」
文書やデータなどの資料を収集し、保存したもの。その保管施設を意味することもある。アーカイブズともいう。※「保存記録」「記録保存館」
ある事業を進めた場合、周囲にどのような影響を与えるかを事前に調べ、評価すること。環境分野で多用される。「環境アセスメント」「リスクアセスメント」などがある。※「影響評価」「事前評価」
社会に大きな変化をもたらすような技術や仕組みの革新のこと。創造性に重点が置かれることが多い。※「技術革新」「事業革新」
企業や官公庁などで性別や国籍、価値観などにとらわれず多様な人材を活用する意味で使うことが多い。
気の利いた小物や道具、仕掛けのこと。デジタル機器を意味することが多い。パソコン画面上の時計やカレンダーなどを指すこともある。
ファイルの内容を一目でわかるようにパソコンなどの画面上に示した縮小画像で、「親指の爪」の意。
古い建物を大規模に改修すること。単なる修復ではなく、間取りの変更など大がかりなものが多い。
専門分野について分析する人のこと。証券会社やシンクタンクで業界分析などをする専門職を指すことも。※「分析家」「分析専門家」
経理や広報など業務の一部を社外の企業などに委託すること。※「外部委託」「外注」
表の見方 数字は回答者の数。※は国立国語研究所が提案する言い換え例
定着しない訳語
「オンデマンド」や「アーカイブ」は新しい言葉ではないが「ピタッとした訳語がない」(明治大学国際日本学部の田中牧郎教授)。「イノベーション」も単なる技術革新ではない意味がある。
国立国語研究所(東京都立川市)は2002年から06年まで外来語委員会を設置し、言い換えを検討してきた。例えば「オンデマンド」は注文対応、「アーカイブ」は保存記録と提案したが、定着していない。カタカナ語について早稲田大学社会科学総合学術院の笹原宏之教授は「知的で斬新な雰囲気が好まれるのだろう」と指摘する。
だが知的に思える言葉も、多用のしすぎには注意が必要だ。調査では「社長の訓示がカタカナ語だらけで内容が分からない」(30代男性)との声もあった。
「さりげなく説明をそえたり言い換えたりするのが円滑な意思疎通のコツ」(笹原教授)。踊らされず、うまく使いこなす工夫を心掛けたい。
●世代間でギャップ
<警戒心強い20代> ステマ
ステルスマーケティングの略。広告とわからないように宣伝するネット用語。
<投資に関心高い50代> NISA
「ニーサ」と読む。年間100万円までの投資の配当などが5年間非課税になる。
●聞いたことすらない言葉も
2位 AR 拡張現実。スマートフォン上などで、映像や文字を風景に重ねてみせる技術。
3位 クラウドファンディング ネット経由で小口の資金提供者を募る手法。
4位 サステナビリティー 社会や地球環境などの持続可能性。
5位 REIT 資金を不動産に投資する金融商品。「リート」と読む。
●カタカナ語でこんな失敗
・LED(発光ダイオード)が出始めたころ、「レッド」と読んでいた(30代男性)
・上司が「ハイレゾ(高質音源)がいい」と言ったのを「ハイレグ」と勘違い。後日、誤解していたことを知った(60代男性)
・人形の「フィギュア」と聞いてスケートだと勘違いした(40代男性)
・4Kテレビと聞いて、3K=「きつい、汚い、危険」の新バージョンだと思っていた(40代女性)
・米国で「サラリーマン」と言ったら通じなかった。和製英語とは知らなかった(40代女性)
(注)日経生活モニターに「カタカナ語、英文字略語の失敗談」について尋ねた。
◇ ◇ ◇
調査の方法 過去1年間、日本経済新聞の紙面に登場したことがあるカタカナ語、英文字略語の中から、職場や家庭で使用頻度が高いと思われる96語のリストを作成。10月上旬にインターネット調査会社マクロミルを通じて、用語を聞いたことがあるか、意味を知っているか尋ねた。回答者は全国の20~60代以上の男女各世代103人ずつで、有効回答数は1030。「聞いたことがない」と回答した人が50%を下回った用語の中から「聞いたことはあるが意味は分からない」という回答が多かったものをランキングにした。
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