刺し身を食べたいとき、少しずついろいろ味わえるのが「盛り合わせ」。重宝だが、買った後の持ち帰り方に注意したり、ひと手間かけたりすれば一層おいしくなる。
スーパーなどで買う刺し身の盛り合わせは、きれいに盛り付けられているので普通はそのまま皿に移して食卓に出す。だが、味が水っぽかったり、少し生臭く感じたりすることはないだろうか。
薄く切った刺し身は、サクの状態よりも空気に触れる面積が広く、時間がたつにつれて劣化が進む。切り口からドリップ(水分)が出て、生臭さの原因となる。
日本料理店せき亭(東京・世田谷)の店主、関斉寛(なりひろ)さんは、市販の刺し身について「食べる前にひと手間かけるだけで、素材の味を引き出し、おいしくすることができる」とアドバイスする。魚の種類によって方法は異なるが、いずれも生臭さが取れ、ややもっちりした食感になる。
▼白身の魚 タイやスズキなどの白身の魚、タコやイカなら、海水くらいの濃度(3パーセント)の塩水に1分間ほど浸けて引き上げ、キッチンペーパーで水分を拭き取る。「サクの状態であれば、塩を直接ふればよいが、薄い切り身になっていると塩が入り過ぎてしまう」(関さん)。そのために塩水を使う。
▼赤身の魚 マグロやカツオなどの赤身や、サーモンは、濃い口しょうゆ1、みりん1、水1の割合で合わせたものに浸ける。アジやイワシなどの青魚は、すし酢にくぐらせる。プロは合わせ酢をつくるが、いちいちつくるのはめんどう。家庭では市販のすし酢で代用してもいいという。
▼脂が強い魚 ブリなど脂が強い刺し身は、バーナーなどで皮目を軽く炙ってから、白身や赤身と同じように処理をすればよい。さらにマグロなど、筋が強く入っている刺し身は、筋を切るように隠し包丁を入れると、食感がよくなり、さらにおいしく感じる。
刺し身の下に敷かれているツマは、魚の汁が付いて生臭いからと捨てる人が多い。関さんは「ツマのダイコンは塩を振り、しんなりさせて水洗いし、すし酢に漬けると、なますになり、刺し身の付け合わせになる」と話す。「大葉も洗って、ちぎって刺し身と一緒に食べるといい」。食品廃棄を減らす観点からも、ぜひ試してみたい。