林さん「でも半導体産業は日本では衰退したのではないの?」

日本の半導体は1980年代、世界市場の6割近くを占め「電子立国」を掲げる日本の象徴でした。しかし、その後、韓国や台湾の企業がものすごい勢いで追い上げ、今では日本のシェアは10%以下まで落ちました。米国の企業も底力を見せ、例えばインテルのチップは、どんなパソコンにも入るようになりました。

衰退の理由には日本のメーカーの経営の判断が甘かった面もあります。半導体のビジネスは不振のときでも我慢して投資を続けなければなりません。ところが、日本では総合電機メーカーが一部門の半導体だけにお金を使うわけにはいきませんでした。

とはいえ、いろいろな会社の中に優秀なエンジニアが残っています。今が最後のチャンスかもしれません。

渡辺さん「日本は今後この分野で主導権を握れるの?」

残念ながら主導権は握れないでしょう。半導体を製造する技術では、TSMCと韓国のサムスン電子が圧倒的に強く、開発・設計の技術では米国に優れた企業がたくさんあります。追いつくのは簡単ではありません。それに加えて、中国のメーカーも急速に力をつけています。

一方で日本には得意分野もあります。例えば半導体の一種であるソニーグループの画像センサー素子は、世界の市場でシェア4~5割を占めています。電力を送ったり止めたりするパワー半導体も日本企業が強い分野です。

大切なことは、新しい技術と、新しい需要を生み出すことです。材料や加工法など基礎的な研究開発の力が試されます。また、これまで想像もしなかった分野に半導体が活用されると、需要は一気に増えるでしょう。需要が増えれば、半導体産業に活路が開けるかもしれません。

ちょっとウンチク

「インテル入ってる」だけじゃない

ひと昔前のパソコンは「インテル入ってる」が、はやりだった。多くの機種が米インテル製の半導体を採用し、消費者はインテルの搭載機種でパソコンを選んだ。日本の半導体メーカーが入り込む余地はなかったが、パソコンからスマホの時代に移り、インテルが入ってない情報機器が増えている。

規格化して大量生産される汎用チップは、値段が安く応用の幅も広いが、特定の用途には向かない。人工知能(AI)や仮想現実(VR)、電気自動車(EV)などの新分野が広がるにつれて、特定の企業のために少量生産する専用チップの需要が増えそうだ。(編集委員 太田泰彦)

■今回のニッキィ
林 美帆子さん 今年、転職してデジタルトランスフォーメーション(DX)関連の仕事に携わり、充実の日々を過ごす。ラジオNIKKEIで放送中の推しのアイドルが出演する経済番組を聴くのも楽しみ。

渡辺 さおりさん 自動車部品関連の企業に勤務。コロナ禍で苦労しながらも女性従業員のネットワークづくりに取り組む。最近、半導体の供給不足が自らの仕事にも影響し、半導体の大切さを実感した。

[日本経済新聞夕刊 2021年9月6日付]

「ニッキィの大疑問」は原則月曜掲載です。


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