4種類のチーズでピザをイメージしたのが「イースタン・クワトロフォルマッジ」。半分に切ったバゲットを横にスライスし、ゴーダ、グリュイエール、モッツァレラ、ブルーチーズを同量ずつのせる。ブルーチーズを最後に散らすと、見た目のアクセントになる。
180度のオーブンで5分ほど焼いたら、仕上げに中東のフリカケ「デュカ」をトッピング。クミンシード、コリアンダーシード、アーモンド、カシューナッツを細かく砕いたもので、エキゾチックな香りとカリカリの食感が加わり、クリーミーなチーズのアクセントになる。デュカは輸入食材店などで手に入る。食べるときにたっぷりハチミツをかけると、甘じょっぱくクセになるおいしさだ。
最後は「ホット・デニッシュ・ピザトースト」。少し手間がかかるが、やめられないおいしさだ。ポイントはデニッシュ食パンまたはクロワッサンと、ピリッと辛いアラビアータソースを使うこと。みじん切りしたニンニクと輪切りにしたタカノツメをオリーブオイルでじっくり炒める。この油を少量取り分けたら、トマトの水煮缶を加えて煮詰める。「市販のパスタソースを使ってもいいし、残り野菜やベーコン、ソーセージなどを加えてもいい」(山口さん)
パンの表面にオリーブ油を塗り、アラビアータソース、ピザチーズ、さらに生トマトのスライスをのせ、180度のオーブンで7~8分焼く。取り分けておいたニンニク油をかければ完成だ。
トマトは水分の少ないミディトマトやプチトマトが好適。辛いソースとジューシーな生トマトには食パンより、リッチで香ばしさのあるデニッシュパンが合う。冷めてもおいしいのに驚いた。
厚切りの食パンをおいしく焼き上げるコツを紅鹿舎の村上さんが教えてくれた。「パンに具材をのせたらラップをふんわり掛け、500~600ワットのレンジで10~20秒だけ温める。それからオーブントースターで焼く」
熱々でも、冷めてもおいしいピザトースト。具材を工夫して、昭和の喫茶店気分を楽しむのもいい。
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昭和の日本で生まれた傑作
ピザトーストは「珈琲館 紅鹿舎」の創業者、村上末吉さんの妻・節子さんが考案した。1957年にできた洋食店の2号店として、64年にオープンした当初からの人気メニューだ。六本木のイタリア料理店の“ピザパイ”が大好物だった節子さんは、「うちにある材料で作れたら毎日食べられるのに」と試行錯誤。食パンで再現したピザトーストは夫にも認められ、店のメニューになった。ポイントはたっぷりのチーズと具材を小さく切って、まんべんなく敷き詰めること。どこから食べても具材が味わえるように、との工夫だ。
(ライター 松野 玲子)
[NIKKEIプラス1 2021年9月4日付]