シール跡に手あか こびりつきよごれを上手にとるには
うっかりで、あるいは気づかないうちに少しずつたまる「こびりつき汚れ」。簡単には落とせないそんな汚れが住居にはしばしば生じる。身近な洗剤や道具できれいにする方法を紹介する。
▼シール跡、テープ類 子どもがいればイタズラで、そうでなくてもガムテープの一部や値札などのシールが、壁や家具、床などにこびりついてしまうことがある。
ふすまや紙が素材の壁クロス、あるいは文房具など、水気を嫌う素材に貼られたシールは、ヘアドライヤーで糊(のり)を温めてゆるめ、剥がす方法がある。糊が柔らかくなったら、ピンセットで縁からゆっくり剥がす。
ビニールクロスの壁紙には食器用中性洗剤が効く。原液のまま塗って10分おき、ピンセットで縁から丁寧に剥がす。状態にもよるが、クロス自体が剥がれてしまう恐れがあるので丁寧に作業しよう。剥がした後に残った糊はメラミンスポンジで処理し、すすぎ拭きで洗剤成分を拭う。
家具や床など少しの水気には耐える場所、また面積が広めな場合も、食器用中性洗剤が効果的だ。原液を10分。糊をゆるめた後、ヘラか不要になったクレジットカードなどを使ってこそげ落とす。
糊が古かったり、薄くて扱いにくかったりする場合は、マニキュアリムーバーなどの有機溶剤を少量含ませたコットンでこそげ落とす方法もある。糊だけがしつこく残ってしまったときは、湿らせたメラミンスポンジでこすると容易に落ちる。
▼手あか 長期間使用しているデスクやテーブルの縁、建具の取っ手、スイッチプレートに付いた手あかによる皮脂汚れは、薬局で手に入る消毒用エタノールがとても効果的だ。ティッシュペーパーにエタノールを少量染み込ませたもので拭き取る。
明るい色のクロスの壁が手あかで黄変している場合は食器用中性洗剤を。濡らしたタオルかマイクロファイバークロスに原液を少量垂らし、もみこんだもので力を入れずに拭う。メラミンスポンジを併用する方法も。ただ、クロスがボロボロにならない程度のほどよい力加減が必要だ。
▼風呂椅子などのあか 水道水の成分に由来する水あかと、石鹸や皮脂由来の湯あかの複合汚れはやっかいだ。
風呂椅子や洗面器にこびりついたこれらの汚れは、まず浴室掃除用の中性洗剤を吹き付けて数分置いたのち、スポンジなどでこすり洗いして湯あか汚れを落とす。次に浴室掃除用の(弱)酸性洗剤を吹き付けて同様に洗い、水あか汚れを落とす。汚れはまず水あか、そこに湯あかという順にたまるので、逆をたどって落とす洗剤の"二刀流"が効果を発揮する。
最近の浴室用中性洗剤は界面活性剤が改良されており、中性洗剤だけで汚れが落ちてしまうことも。中性洗剤を先に使うのはこのためだ。
▼トイレの尿石 便器の内側にこびりつく尿石は(1)細菌が尿を代謝して酵素を出す(2)酵素が尿素を分解してアンモニアが発生し、pHがアルカリ性になる(3)尿に含まれるカルシウムイオンが難溶性のカルシウム化合物に変化する――という経過で生成される。
つまり掃除頻度が汚れのつき方に見合っていない場合に発生しやすい。固まってしまった尿石は、粘度のあるトイレ用酸性洗剤を塗布し、溶解して落とすしかない。便器にトイレットペーパーを貼り込み、洗剤を染み込ませて湿布状態にする。汚れ具合によって湿布時間は調整しよう。
室外にもしつこいこびりつき汚れはある。たとえば玄関のタタキやポーチ。こうした屋外に接続する場所にこびりつきやすい泥砂は、乾いた状態のままデッキブラシのような屋外用の硬質ブラシでこそげ落とす。中途半端に残すと空気中の湿気を吸って再び固着してしまうので、落とした泥砂はすぐに掃除機で吸引してしまおう。
ベランダなどに知らぬ間に落とされた鳥のフンは、時間がたつほどに落としにくくなる。含まれる酸の影響でサッシなどの変色ももたらし、感染症を媒介する恐れも。
基本的には消毒用エタノールをたっぷり含ませたキッチンペーパーやウエットシートでフンを覆い、こびりつきをゆるめた上でそのペーパーでこそげとって落とす。面積が広い場合は専門業者に任せることも検討しよう。
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落としにくい生花の花粉
花瓶の生花から知らないうちに花粉が落ち、固まったり染みたりで汚れることがある。花粉はただの「粉」ではなく、特にユリの花粉には独特なベタつきもある=写真。不用意に水拭きすると、かえってこびりついて落ちにくくなる。床や棚などに落ちた花粉は速やかにガムテープやセロハンテープなどに付着させて剥がすか、掃除機で吸引するようにしよう。
色が強くこびりついてしまった場合は、無水エタノールやアセトンなどの有機溶剤を染み込ませた布でたたき落とす方法もある。元の素材の変色には要注意。
(住生活ジャーナリスト 藤原 千秋)
[NIKKEIプラス1 2021年8月28日付]
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