深夜に目が覚める「中途覚醒」 注意したい日中の眠気
寝苦しい季節、深夜に目が覚める「中途覚醒」に悩む人は少なくない。入眠障害などと同じく不眠症の症状のひとつで、年齢を重ねると目立ってくる。朝までぐっすり眠るためにも、その原因や対処法を知っておこう。
不眠症には大きく4つのタイプがある。眠るまでに時間がかかる入眠障害、深夜に目が覚めてしまう中途覚醒、必要以上に早く目覚める早朝覚醒、眠った満足感がない熟眠障害だ。睡眠総合ケアクリニック代々木(東京・渋谷)の井上雄一理事長は「入眠障害は年代による差がそれほどないが、中途覚醒と早朝覚醒は高齢者が多い。年をとると睡眠が浅く、分断されやすくなる」と説明する。
実際に日本大学の調査では「週に3回以上、中途覚醒がある」と答えた40~50代の割合が13%だったのに対し、60代以上は21%だった。
年齢を重ねれば中途覚醒が増えるのは自然とはいえ、できれば減らしたい。対策の第一歩はやはり規則正しい生活だ。毎日同じ時刻に起き、同じ時刻に食事をする。井上理事長は「今は新型コロナウイルス禍でリモートワークが普及したこともあり、生活のリズムが乱れる人が増えている」と警鐘を鳴らす。オンとオフが曖昧になると、昼間にぼんやりする一方、夜によく眠れなくなるという。
杏林大学医学部精神神経科の中島亨兼担教授は「眠くなるまでは無理にベッドに入るべきではない。生活のリズムをつくるためにも朝は同じ時刻に起きるべきだが、寝る時刻にはあまりこだわらない方がよい」と助言する。
年齢を重ねると、睡眠時間は短くなる傾向がある。1日当たりの平均睡眠時間を調べた海外の研究によると、25歳は約7時間、40代に入ると6時間半前後、65歳では約6時間と、年代が上がるほど短くなっている。
環境の違いや個人差もあるため一概には言えないが、必要な睡眠時間は年齢とともに減るとされる。あまりにも長時間横になっていると、睡眠が浅くなり、中途覚醒が起きることもあるようだ。ベッドにいるのをまずは30分短くするといった手がある。
寝室の環境づくりにも心を配りたい。中島教授は「体温が上がることでも中途覚醒が起こりやすい」と指摘する。暑い夜にはエアコンを使って快適な気温を保ち、眠りを妨げる光や音といった刺激が入らないようにしたい。
運動の習慣を付けるのも大切だ。定期的に運動している人には中途覚醒が少ないという研究報告もあるという。ストレスも大敵。睡眠が浅くなって中途覚醒を起こしやすくなる。自分なりのストレス解消法をみつけたい。
寝酒は逆効果だ。アルコールを飲むと一般に寝付きがよくなるといわれるが、睡眠が浅くなってしまい、中途覚醒を招きやすい。睡眠中の脱水を防ぐために水分補給は必要だが、過度にとると、目を覚ましやすくなる。トイレに毎晩起きるような人は水分のとりすぎに注意したい。
中途覚醒に限らず、不眠症の目安として重視されるのは日中の眠気。井上理事長は「中途覚醒があったとしても、元気に昼間活動できているなら大きな問題はない」と強調する。ただしいつも眠く、しばしば居眠りしてしまうようなら、まずは精神科や心療内科などを受診するようにしたい。日本睡眠学会のウェブサイトでは全国の専門医療機関が紹介されている。
中島教授は「中途覚醒を起こす代表的な病気としては眠っているときに呼吸が止まる『睡眠時無呼吸症候群』や足がピクピクと動く『周期性四肢運動障害』がある。前立腺肥大症などの泌尿器系の病気や心不全も考えられる」と語る。日中の眠気は侮れない。
(ライター 伊藤 和弘)
[NIKKEIプラス1 2021年8月21日付]
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