カシオ計算機の腕時計は「G-SHOCK」や「OCEANUS」シリーズなどが有名だが、手ごろな価格のスタンダードな製品も多数発売している。ブランド名はついていないが必要十分な機能を備える時計として、一部のモデルは愛好者から“チープカシオ”“チプカシ”と呼ばれて長年親しまれてきた。こうした製品をカシオは2021年7月に「CASIO Collection」としてシリーズ化。ラインアップを3つのカテゴリーに分け、パッケージデザインは環境に配慮したものに変更した。店頭でのアピール強化や、入門機として将来のファン獲得を狙っている。

ブランド化されていない、カシオ計算機のスタンダードウオッチをシリーズ化した「CASIO Collection」
ブランド化されていない、カシオ計算機のスタンダードウオッチをシリーズ化した「CASIO Collection」

 「CASIO Collection」は、これまで販売してきたスタンダードウオッチから売れ筋を厳選し、新製品を加えてシリーズ化したものだ。全部で128製品あり、「STANDARD」「SPORTS」「POP」の3カテゴリーに分かれている。希望小売価格は2200~1万4850円(税込み)だ。

 STANDARDは、いわゆる“チープカシオ”としてイメージされるシンプルなデザインのデジタル時計やアナログ時計から、ソーラー充電対応モデルや20気圧防水対応モデルなどの高機能モデルまであり、シリーズ化に当たって追加されたモデルもある。普段使いやファッションアイテムとして幅広いユーザーをターゲットとしている。

「STANDARD」は、A158WA-1JH(左)や一番の売れ筋だというMQ-24-7B2LLJH(右)などの定番モデルから、多機能モデルまで幅広い
「STANDARD」は、A158WA-1JH(左)や一番の売れ筋だというMQ-24-7B2LLJH(右)などの定番モデルから、多機能モデルまで幅広い

 SPORTSは、モデルによって歩数計やラップメモリー、方位計や気圧計などの機能を持つ本格的なスポーツウオッチのカテゴリーだ。利用シーンごとにランニング用、ウオーキング用、フィッシング用、トレッキング用、マリンスポーツ用がある。

 POPはシリーズ化に当たって新たに登場した製品カテゴリーで、小型軽量であることやカラフルなデザインが特徴だ。女性向けのほか、知育用やプレゼント用など子供が身に着ける時計としても提案したいとしている。

「SPORTS」はスポーツやアウトドア向け。ランニング用のSTR-300J-1AJH(左)、ウオーキング用のWS-2000H-2AJH(右)などがある
「SPORTS」はスポーツやアウトドア向け。ランニング用のSTR-300J-1AJH(左)、ウオーキング用のWS-2000H-2AJH(右)などがある

 スタンダードウオッチをCASIO Collectionとしてシリーズ化した目的は、雑多なラインアップを整理して選びやすくするためだ。

 発案したのは営業側。カシオ計算機 営業本部 国内営業統轄部 時計推進部 時計推進室の畠弘紀氏は、「これまでカシオ計算機のスタンダードな時計は商品のグルーピングができていなかったので、分かりやすくしたかった。CASIO Collectionとしてジャンルを明確にすることで、利用シーンに合わせて選びやすくなる」と狙いを語る。

環境に配慮したパッケージ

 シリーズ化とともに、パッケージを一新した。これまではプラスチック製のブリスターパッケージだったが、CASIO Collectionではリサイクルペーパーを使った紙の箱になった。プラスチックは中身の製品を見せるカバーの部分に使われているだけで、使用量を従来のパッケージより8割強削減している。

 「多くの企業がプラスチックの削減など環境に配慮した取り組みを行っていて、カシオ計算機としても同じようなことができないかと考えていた。リサイクルペーパーを主体にすることで、シリーズ化とイメージ一新を一気に行った」(畠氏)という。Z世代など若い世代を中心に、環境問題やSDGs(持続可能な開発目標)に関心を持ち、企業の取り組みを重視する人が増えている。そうした層へのアピールにつながりそうだ。

「CASIO Collection」のパッケージ。シンプルな紙の箱で、機能を示すアイコンが上部に並んでいる
「CASIO Collection」のパッケージ。シンプルな紙の箱で、機能を示すアイコンが上部に並んでいる
型番や希望小売価格などは背面に記載されている
型番や希望小売価格などは背面に記載されている

 デザインは、幅広い層に受け入れてもらえる分かりやすさを目指した。中身の製品が引き立つ白くシンプルなデザインを採用。上部の目立つ部分には「日常生活防水」「ストップウオッチ」「ラップメモリー200本」などの機能を記したアイコンが並び、どんな機能を持っているのか、どんな利用シーンに向いているのかが分かりやすくなっている。量販店などの店頭では、製品パッケージをずらりと並べてぶら下げて陳列していることがある。そうした場合でも目当ての製品を探し出しやすそうだ。

子供と女性のユーザー獲得を狙う

 シリーズの中でも注目は、新たに投入されるPOPのカテゴリーだ。カラフルで小型軽量な製品が中心で、子供や女性にアピールする。これまでカシオ計算機のスタンダードウオッチは黒、白、シルバーといったオーソドックスなカラーが多く、ユーザー層の中心は20~40代の男性だった。そうしたイメージを変えるとともに、カシオブランドの時計への入門機としてファン獲得につなげたい考えだ。

 「色やデザインに面白みを持たせることで新規のユーザー層を獲得したい。老若男女問わず受け入れてもらえるような、親しみやすいカシオブランドを発信していきたい。それが将来的にカシオ計算機のファン獲得につながり、G-SHOCKやBABY-Gといったブランドの製品を買ってもらえる“長いお付き合い”につながればと考えている」(畠氏)

子供や女性の取り込みを狙う「POP」は、希望小売価格2200~3300円でプレゼントとしても手ごろ。写真はベルトがスケルトンになっているF-91WS-2JH(左)と、小型軽量のアナログモデルLQ-139LB-4BJH(右)
子供や女性の取り込みを狙う「POP」は、希望小売価格2200~3300円でプレゼントとしても手ごろ。写真はベルトがスケルトンになっているF-91WS-2JH(左)と、小型軽量のアナログモデルLQ-139LB-4BJH(右)

 カシオ計算機によると、CASIO Collectionとして発売してから、大手量販店での出足は好調だという。製品数を整理したことや、シンプルで環境に配慮したパッケージに変更したことによるイメージチェンジが、一定の効果を発揮していると言えそうだ。

(写真/スタジオキャスパー、写真提供/カシオ計算機)

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