窮地救った火星探査機「のぞみ」の経験

発見したものの、はやぶさから届く電波は極めて弱い。迅速かつ正確な復旧作業が必要だった。

電波が届いたということは、太陽電池パネルが太陽に向いて発電していることを意味します。しかしそれがいつまで続くかわかりません。姿勢を制御して少しでも長く発電できるようにする必要がありました。

通信は途切れ途切れです。ここで火星探査機「のぞみ」の経験が生きます。機器が動くかどうかを判定する短い指令を送り、イエスかノーかだけの答えを受け取る「1ビット通信」を使ったのです。時間をかけて機器の状態を調べてはやぶさの姿勢も確認、安定して通信できるようになったのが3月6日です。イトカワから1万3千キロメートル、地球から3億3千万キロメートル離れた場所を漂っていたはやぶさ内部の状態がわかるようになりました。

ただ、問題が残りました。キセノンガスを噴射して姿勢制御したのですが、キセノンは本来イオンエンジンの燃料です。使い続けると地球に帰る燃料が足りなくなります。別の方法がないか考えていた時にNECの白川健一さんから思いもよらない提案がありました。太陽の光を使う方法です。

太陽の光にはわずかですがモノを押す力があります。その力を姿勢制御に利用するのです。難しいバランス調整が必要でしたが、風見鶏のように自然と太陽の方向を向いてくれる方法が見付かったのです。

[日経産業新聞 2020年6月3日付]

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