行方を発見、復旧に全力 太陽の光を姿勢制御に利用宇宙航空研究開発機構(JAXA) 元シニアフェロー 川口淳一郎氏(17)

イトカワに接近するはやぶさ(池下章裕氏による想像図)
イトカワに接近するはやぶさ(池下章裕氏による想像図)

エンジンの故障をはじめ数多くのトラブルに見舞われながら、困難を乗り越えて地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」。宇宙航空研究開発機構(JAXA)でプロジェクトマネージャを務めた、元シニアフェローの川口淳一郎氏は、小惑星からサンプルを持ちかえる世界初の試みを成功に導いた。川口氏の「仕事人秘録」の第17回では、行方不明から一転、見付かった「はやぶさ」の復旧作業を振り返ります。

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行方不明になった小惑星探査機「はやぶさ」は思いのほか早く発見された。

「探査機からと思われる電波が受信できるようになりました」。行方不明になって46日目の2006年1月23日、米国宇宙協会での発表のためにフロリダに着いた私にこんな電子メールが届きました。「確認したのか」と担当の西山和孝さん(現宇宙航空研究開発機構准教授)に連絡した時の声は自分でもわかるくらい興奮していました。急きょ予定をキャンセルして日本への飛行機に乗りました。

これまで、ただ電波が届くのを待っていたのではありません。こちらから送った指令をはやぶさが受け取り、実行しないと電波も戻ってこないのです。

指向性の高いアンテナを全方向のアンテナに切り替え、途切れ途切れの通信でも指令が受け取れるようソフトもできるだけ短く書き直しました。はやぶさが受け取っているかどうかも分からない指令を送り続けたのです。電波が戻ってきたということは、地球から送った全指令が受信され、実行されたということです。

うまくいっていないプロジェクトをどこで諦めるかの判断は難しい。真面目で責任感の強い人ほど客観的データを集めて諦める材料にしがちです。しかし重大な場面では意思を貫くための材料だけ集めるやりかたもあると思うのです。当事者はアクセルだけを踏み、中止の判断は組織に任せる。勝手かもしれませんが、周囲や組織を信用していないとできないことです。

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窮地救った火星探査機「のぞみ」の経験
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