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海外では住民が自分のかかりつけ医を登録する仕組みも定着している。英国では「ジェネラルプラクティショナー(GP)」と呼ばれる医師がいて、様々な病気の診療や相談に応じる。患者はそれぞれ登録したGPにかかるのが基本になっているという。

身近で頼りになる存在として厚生労働省や日本医師会もかかりつけ医を持つのを推奨してきた。しかし日本に登録制度はなく、健康で病院とは縁がない生活を送る人にはそもそも接点がない。「どう見つければいいのかわからない」という声もよく聞かれる。

実際、アリオ北砂内科(東京・江東)の八十島唯義医師は「働き盛りの30~40代が切実にかかりつけ医を求めるようになってきたと近年特に感じている」と明かす。かかりつけ医というと、一般的には内科の医師が多いイメージがある。ただ信頼できる医師がみつかれば他の診療科でもかまわないという。

できれば医師1人に絞りたいところだが、自宅と職場それぞれの近くに1人ずつ、診療科別に持つケースもある。一人ひとりのニーズによって変わってくるようだ。

八十島医師は「コロナ禍でリモートワークが定着し、在宅時間が増えた今はかかりつけ医を見つけるいいタイミングになる」と指摘する。健康診断や様々な検査、ワクチン接種などで地元の病院や診療所に足を運び、医師と話す機会が持ちやすいからだ。その際に「話しやすい」「信頼できる」と感じるかはひとつの判断基準になる。

かかりつけ医を選ぶのには今のところ特別な手続きや契約は不要。「この医師をかかりつけ医にしよう」と決めるところから始まる。八十島医師は「私を含め多くの医師はどの患者もかかりつけと考えて診療をしている。気軽に声をかけてほしい」と促す。

医師と関係を築くのが第一歩。上手にコミュニケーションできれば、自分の健康状態や希望をより理解してもらえる。医師の側も同様で、八十島医師は診察の最後に必ず「他に気になることはありますか」と付け加える。遠慮や迷いから口にできない不調を聞き出すのが狙いだという。

最近では薬について気軽に相談できる「かかりつけ薬剤師・薬局」も広がってきた。こうした存在は生活の質の向上につながりそうだ。

(ライター 大谷新)

[NIKKEIプラス1 2021年8月14日付]