高級車メーカーのビー・エム・ダブリュー(以下BMW、東京・千代田)がEC事業を強化している。2020年7月に全車種のネット販売を開始。車種ごとの動画を用意するなど、ネットで検討しやすいようにコンテンツを併せて強化した。さらに「BMW@HOME」というコンセプトの下、ディーラーの担当者がオンラインで接客できるサービスを用意。比較検討、ディーラーへの相談、購入まで一貫してネットで完結できる環境を整えた。

「BMW X7 Edition Dark Shadow(エックスセブン・エディション・ダーク・シャドウ)」。1860万円(税込み)の価格にもかかわらず、用意した7台がわずか3分で完売した
「BMW X7 Edition Dark Shadow(エックスセブン・エディション・ダーク・シャドウ)」。1860万円(税込み)の価格にもかかわらず、用意した7台がわずか3分で完売した

 1800万円超のクルマがネットでわずか3分で完売――。

 BMWは20年9月15日に限定車「BMW X7 Edition Dark Shadow(エックスセブン・エディション・ダーク・シャドウ)」を自社ECサイト「BMW オンライン・ストア」で販売した。価格はなんと1860万円(税込み)。用意した7台が一瞬にして売れた。

 BMW オンライン・ストアは新車の販売に特化したECサイトだ。18年から限定車種を対象にネット販売を開始。19年には一部のディーラーと組んでテスト的に販売してきたが、20年7月にフルラインアップのネット販売を開始し、本格的にEC事業に乗り出した。ディーラー販売用とネット販売用の在庫を別々に確保して販売している。

 ネット販売といっても、使い方は一般的なECサイトとはやや異なる。希望の車種を選び、オプションなどを設定すると見積もりが取れるので、仕様が決まったらBMWのサイトに会員登録する。商品を受け取るディーラーを選択し、予約金として車両代の一部を支払う。ディーラーを選択しなかった場合にも、会員登録時の住所から近隣のディーラーが割り当てられる。その後、契約書などの必要書類が自宅に届く。最後に、選択したディーラーの店舗に納車されたら受け取りに行くといった具合だ。注文完了後、自宅に配送されるECサイトとはこの点が異なる。

BMW オンライン・ストア
BMW オンライン・ストア

 売り上げはディーラーの実績になるため、オンラインストアとディーラーが顧客を取り合うことにはならない。メーカーと販社という従来の関係性を維持しながら、ネット販売を実現する工夫だ。

BMWのネット販売強化に2つの理由

 BMWがEC事業を強化する背景には、大きく2つの理由がある。1つ目は「消費行動の変化」だ。「以前は購入までのディーラー来店回数は3回程度であることが一般的だったが、今はテストドライブのための1回だけで購入する人が増えている」とBMWブランド・マネジメント・ディビジョン カスタマー・リレーションズ デジタル・マーケティング・マネジャーの塩原フロニ フリデリケ氏は言う。

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