コカ・コーラシステムは「綾鷹カフェ 抹茶ラテ」の販売を2021年7月26日に再開した。緑茶ブランド「綾鷹」の新機軸商品として21年3月に発売したものの、予想を超える売れ行きから1週間で出荷停止を決めた。販売再開まで4カ月もかかった背景には同時期に発売され、同じく出荷停止となったコスタコーヒーとの調整もあったという。

2021年3月に発売したものの、約1週間で出荷停止になった「綾鷹カフェ 抹茶ラテ」の440ミリリットルサイズ。7月26日に販売を再開した(画像右は自販機専用280ミリリットルで継続販売されていた)
2021年3月に発売したものの、約1週間で出荷停止になった「綾鷹カフェ 抹茶ラテ」の440ミリリットルサイズ。7月26日に販売を再開した(画像右は自販機専用280ミリリットルで継続販売されていた)

新規性で想定以上の売れ行き

 「メーカーとしての最低限の役割を果たせず大変申し訳ない」。日本コカ・コーラ マーケティング本部コーヒー、ティー、スポーツ&ウォーターカテゴリー事業本部 緑茶事業部 部長の助川公太氏は開口一番、「綾鷹カフェ 抹茶ラテ」が発売早々、出荷停止に追い込まれたことについて謝罪の言葉 を述べた。

 綾鷹カフェ 抹茶ラテは、同社の定番緑茶ブランド「綾鷹」の新機軸商品として、2021年3月に発売(関連記事「新シリーズ「綾鷹カフェ」も 日本コカがお茶で発売ラッシュのワケ」)。カフェラテ、ティーラテに続く「ラテ第三極」として日本コカ・コーラが注力する商品だったが、コンビニやスーパーなどで販売する440ミリリットル商品の売れ行きが想定以上だったため、発売後わずか1週間で出荷停止を決めた。自動販売機で販売する280ミリリットル商品は販売を継続したが、公式アプリ「Coke-ON」でのプロモーションなどは即座に打ち切った。

 同社の予想を超える販売につながったのは、SNSによるところが大きい。無糖緑茶ブランドの綾鷹から初めて発売する有糖製品、ペットボトル入り飲料では珍しい抹茶ラテということで、発売前からSNSを中心に話題となった。発売後は、味を評価する投稿が増えたことで注目度が高まったという。

 「発売前から、(綾鷹ブランドで有糖の抹茶ラテを出すことの)新規性を評価いただけるとは考えていたが、想像以上だった。若い方々や、これまで綾鷹を飲んだことがなかった、カフェラテやミルクティーといった“ラテ系”有糖飲料のユーザーにも多く手に取っていただけた」と助川氏。その結果、出荷停止に踏み切らざるを得なくなったが、顧客層拡大自体はうれしいことと話す。

 発売当初、綾鷹カフェ 抹茶ラテはコロナ禍の外出自粛でカフェに行く機会が減ってしまった“カフェ好きの20~30代”をメインターゲットに設定していた。そのため、味の本格感にはこだわったという。 発売以来、綾鷹ブランドの監修を務めてきた上林春松本店(京都府宇治市)に加え、人気カフェチェーン「猿田彦珈琲」にも監修を仰ぎ、“カフェらしい味”をペットボトル飲料で再現した。

綾鷹のブランドアンバサダーの吉岡里帆が出演するテレビCMや店頭、限定カフェイベントなどでも大々的にアピール
綾鷹のブランドアンバサダーの吉岡里帆が出演するテレビCMや店頭、限定カフェイベントなどでも大々的にアピール

 半面、味へのこだわりが出荷停止を長引かせる要因にもなった。綾鷹カフェ 抹茶ラテは抹茶をふんだんに使用するため、通常のラテ系飲料とは製造ラインが別で、現状、全国に3ラインしかないという。しかも、そのラインは「コスタコーヒー」と共通だ。コスタコーヒーは21年4月に発売、やはり予想を超えた人気で直後に出荷停止している(関連記事「「コスタコーヒー」人気で出荷停止 ジョージアとの棲み分けは?」)。このため、綾鷹カフェ 抹茶ラテの販売再開に際しては、コスタコーヒーとの調整が必要となった。同社はコスタコーヒーの販売再開を優先したため(同商品は21年6月7日に再開)、綾鷹カフェの出荷停止期間が長引く結果となった。

SNSでの盛り上がり受け、ターゲットを修正

 コスタコーヒー、綾鷹カフェ 抹茶ラテと、同社商品では予想を上回る売れ行きによる出荷停止が続いている。これについて、助川氏はSNSの普及以降、販売予測が困難になってきていることを明かした。「例えば、コンビニでのPOP掲示などは来店客数などから効果が推測できるが、SNSは違う。綾鷹カフェ 抹茶ラテが発売前、発売後ともにここまで話題になるとは想定できなかった。逆にバズらせようとしても話題にならないものもある。その中で、予測の精度をどう高めていくかは今後のチャレンジだと思う」(助川氏)

 一方で、SNS上の話題性は商品の思わぬ可能性への気付きになることもあるようだ。綾鷹カフェ 抹茶ラテの場合、SNSを通じて想定より若い世代への認知が広がった。長引く出荷停止が希少性につながり、若年層の関心を駆り立てた 面もあり、見つけた人がSNSでアップするたびに話題になって『10代女子が選ぶ21年上半期に流行ったモノランキング』では飲料で唯一、3位にランクインした(マイナビティーンズラボ調べ)。

 期せずして、ティーン世代に受け入れられたことで、今後のマーケティングでは、企画当初よりも軸足を若者に移すという。例えば、10代を中心に綾鷹カフェ 抹茶ラテのアレンジレシピを自発的に考案して投稿するという動きが活発だったため、販売再開のリリースで公式アレンジレシピも公開した。「アレンジレシピは発売当初には念頭になかったアイデア。こういう楽しみ方もあるのかと、気づかせてもらった」と助川氏は話す。

販売再開に合わせて暑い夏に合うアレンジレシピを考案、公開した。画像は「ババロア風」
販売再開に合わせて暑い夏に合うアレンジレシピを考案、公開した。画像は「ババロア風」

 綾鷹カフェ 抹茶ラテの話題性は、抹茶商品市場の活性化にもつながりそうだ。21年8月17日には、サントリーが「クラフトボス」ブランドから初の抹茶ラテ商品「クラフトボス 抹茶ラテ」を発売する。

 助川氏は「思ったよりも早く他社からも商品が発売されることになったが、その前に販売再開が決められたのはよかった。他社からも商品が出ることで、初めてカテゴリーとして形成されていくので、ライバルではあるが一緒に抹茶ラテのムーブメントを起こしていきたい。そのうえで、綾鷹カフェ 抹茶ラテをパイオニアとして定着できれば」と話す。

 22年には綾鷹ブランドが15周年を迎える。記念年には綾鷹本体のバージョンアップに注力するが、それによる綾鷹カフェへの訴求効果 も期待しているという。綾鷹カフェのラインアップ拡充も視野に入れる。「まだ具体的な構想はない」としながらも、助川氏が挙げたのは“和カフェ”で扱われているメニュー。「最近人気のゆずソーダなどもいいかもしれない。(抹茶ラテは有糖で出したが、綾鷹カフェだからといって)無糖も排除するわけではない。今後も日本茶の遊び心を提供していきたい」と意気込みを語った。

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