SFから事業革新する 未来を議論する新メソッドの真価『SFプロトタイピング』

潜水艦、携帯電話、宇宙旅行――。SF(サイエンス・フィクション)は時に、未来の革新を先取りする。また、思いがけない未来を予測することもある。作家、高嶋哲夫氏の小説『首都感染』(2010)には、パンデミックと戦う現在の私たちに似た状況が描かれていた。

未来は不透明と言われる時代、その未来を予想し、生き抜くために注目を集めているのが「SFプロトタイピング」だ。一言でいえば、「未来像」を共有して議論するためのメソッドである。SFの力を借りて思考をジャンプさせ、物語の世界で自由にアイデアを出し議論すれば、チームの思考も活性化する。マイクロソフト、インテル、清水建設なども取り入れている。

本書『SFプロトタイピング』は、科学文化作家の宮本道人氏、美学者、批評家でSF研究者の難波優輝氏、筑波大学システム情報系助教の大澤博隆氏の3人が中心となり、SFプロトタイピングを紹介してその可能性を示す。コンサルタントや起業家、アーティストなどを迎えた5回の座談、著者らの論考、ビジネスでの導入事例などから構成されている。

ワークショップ形式でSFをつくる

一般的なSFプロトタイピングでは、ワークショップ形式で複数の専門家が集まり、アイデアを出し合いながら未来のビジョンをSF作品にする。以前からあるシナリオ・プランニングの手法と比較する調査をしたところ、SFプロトタイピングのほうが挑発性、楽しさで勝る結果が出た。

SFプロトタイピングの特徴として、未来の製品(空飛ぶクルマなど)や社会制度などが登場する。そして、その製品や制度の影響、人々の意識や社会状況の変容について、性格や意志、感情を備えたキャラクターの視点から考察して描かれる。ディストピアを想定したり、差別やジェンダーに切り込んだりして、倫理的課題についても考察できる。企業では、製品開発、ビジョン策定、新人研修などさまざまな場面で役立てられるという。

次のページ
「強制的に事故を起こす」手段