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はやぶさが持ちかえったイトカワの微粒子の電子顕微鏡写真=JAXA提供

はやぶさが持ちかえったイトカワの微粒子の電子顕微鏡写真=JAXA提供

エンジンの故障をはじめ数多くのトラブルに見舞われながら、困難を乗り越えて地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」。宇宙航空研究開発機構(JAXA)でプロジェクトマネージャを務めた、元シニアフェローの川口淳一郎氏は、小惑星からサンプルを持ちかえる世界初の試みを成功に導いた。川口氏の「仕事人秘録」の第15回では、サンプル採取装置のトラブルを振り返ります。

◇  ◇  ◇

小惑星探査機「はやぶさ」から2回目の着陸を記録した詳しいデータが届くと、予想外の事態に直面する。

燃料漏れトラブルへの対応に追われる中、着陸時のデータを何とか受信できました。燃料漏れの影響ではやぶさの電源は一度切れています。記録したデータがすべて消えてしまっている懸念があったのですが、幸い大半は無事でした。

しかし受信データを調べると、とんでもないことが分かりました。成功したと信じて疑わなかった、イトカワのサンプルを採取する装置が正常に作動していなかったのです。このとき、「青ざめる」という言葉の意味を初めて実感しました。

サンプルを採取するために、はやぶさはサンプラホーンという筒状の装置を積んでいます。筒の先をイトカワの表面に押しつけ、筒の中で金属の弾丸を発射。飛び散ったイトカワの破片やチリを採取して地球に持ちかえる仕組みです。

着陸した日にはやぶさから、中央コンピューターが弾丸を発射する指令を出したデータが届いていました。一方で発射装置のコンピューターは、着陸後に弾丸の発射装置を安全な状態に戻す指令を出します。この順番が逆になり、指令は出ても実際には弾丸が発射されなかったのです。打ち上げ前のシミュレーションでは正常作動していましたが、はやぶさが自分で判断して動く自律性を高めるプログラムの手直しを続ける中で、順番が逆になったことに気づけませんでした。

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