もっとも「号表記」が当たり前とされた婦人服業界に異変が生じている。

「Mって9号ぐらいですか?」。小田急百貨店新宿店(東京・新宿)の婦人服売り場で多いのが、60代以上の女性による問い合わせだ。

同店ではS・M・Lなどの表記が増えている。15年ほど前までは「7」「9」「11」など奇数の号で表す商品が多かったが、現在は冠婚葬祭用のブラックフォーマルウエアなど一部に限られる。

明確な統計はないものの、婦人服業界で号表記は減少傾向。通販大手のニッセンも号は通勤向けのテーラードジャケットなどに限られる。

号に代わり、この20年ほどの間に広まったのが「36」「38」「40」など30~40番台の表記。こちらは欧州由来だ。

「おおむね36がSで7号、38がMで9号ですね」と説明するのはセレクトショップ大手ビームス(東京・渋谷)の婦人服「デミルクスビームス」のプレス担当、目黒越子さん。2003年の発売以来36~40の表記を採用。ブランド名がフランス語に由来するため日本企画商品も仏式にした。

36や38でもイタリアの表記を取り入れたところもある。「もともとは欧州の規格でトップバストの2分の1をセンチで表したもの」(大塚教授)。もっとも、フランスの36がイタリアの38に相当するなど国によってばらつきがある。日本の欧州式も厳密ではなくJISを基にしているケースが多いようだ。

欧州式が広まった背景について、大塚教授は「微妙な女性心理がある」とみる。日本の女性には9号を着られる体型を維持すべしという「9号神話」があり、店頭で11号を薦められると落胆する人が多かった。欧州式は号ほど認知されておらず、大きめサイズでも抵抗がなかったという。

S・M・Lの規定もJISにあり、バストのMサイズなら79~87センチと幅で規定されている。前後のサイズと境界が曖昧な点が女性に受け入れられたとの見方もある。

最近は自宅で過ごすことが増え、リラックスしやすいフリーサイズの服も増えている。女性心理を背景に体型を想像しにくい表記はますます広がる可能性がある。

◇  ◇  ◇

紳士服にはイタリア表記

セレクトショップを中心に紳士スーツでも「44」「46」「48」などのイタリア表記が広がる。脇の下を通って一周する上部胸囲の2分の1のセンチで表し、46なら92センチ。90年代の「クラシコイタリア」ブームでイタリア製高級スーツが注目を集め、日本製でもイタリア式にするブランドが増えた。おおむね44=S、46=M、48=Lに相当する。

青山商事など大手紳士服チェーンなどではJISサイズも根強い。標準体型の「A」やがっちり体型の「AB」といった体型区分に号を組み合わせた表記だ。標準体型で身長170センチ、ウエスト80センチなら「A5」。紳士服には偶数号もある。

(堀聡)

[NIKKEIプラス1 2021年8月7日付]