情報提供停止には「オプトアウト」

グーグル、フェイスブック、ヤフー、ツイッター。大手事業者は個人データの利用方法などを明記していた。最も多いのが広告の最適化で「個人の属性や好みに応じて広告を表示する行動ターゲティング広告」に使う。だが、広告に個人データを使われたくないという人は「オプトアウト」という手続きで情報提供を停止できる。

グーグルでは位置情報を収集するのは「カスタマイズされた地図や、訪れた場所に応じたおすすめなどを利用できるように」するためということで納得。嫌ならば停止できる。広告については100を超える項目に関してオン・オフを選べる。

大手事業者がこうした細かい設定ができるようにしている理由について、企業の個人データ利用に詳しい弁護士の板倉陽一郎氏は「プライバシー保護に積極的に取り組む企業が消費者の評価を得るからだ」と説明する。

他のサービスはどうか。本人の同意を得て個人データを預かり、企業に提供する情報銀行サービス。その一つ「Dprime」に加入してみた。まず運転免許証で本人確認。なりすましを防ぐ手続きとして評価できる。

アンケートに答え「行動履歴」の提供を許可。情報を使いたい企業のオファーを見て、提供先を決める。企業からは謝礼としてクーポンなどが配布される。個人データを利用されることに一層敏感になる一方で「自分のデータは売れる」ことを実感した。

もっとも、SNSや検索、その他のサービスが無料で使えるという理由だけで、簡単に個人のデータを差し出してもいいのだろうか。安全かどうかを判断する、もう一歩踏み込んだ基準はないのか。

消費者保護政策に詳しい京都大学のアントニオス・カライスコス准教授は「情報がどんな形で使われるか、それを明示しているかどうかを判断基準にするといい」と助言する。情報を提供して嗜好に合わせた広告が表示されるのは問題がなくても、それ以外のことには使われたくない場合があるためだ。

典型的な事例が、2018年に発覚した、フェイスブック利用者の個人データが英コンサルティング会社のケンブリッジ・アナリティカに流出していた事件。個人データが選挙などにも利用される恐れがあることが分かった。

逆に使われ方がはっきり分かっていれば、情報の提供を過度に恐れることもなくなる。

ベルリン在住のメディア研究者、武邑光裕さんによると、欧州連合(EU)では病気を治すために個々人が自分の医療データを提供し、治療に役立てるプロジェクトが進められている。武邑さんは「自分のデータをコントロールする権利は個人にあることを理解し、自ら進んで世の中のために提供していく動きがこれからは主流になる」とみる。

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データ提供 国内は慎重派多数

総務省が2020年にインターネットを通じて日本、米国、ドイツ、中国の各1000人に対して実施したアンケートによると、企業が提供するサービスやアプリを利用するに際に個人データを「普段から提供している」「提供したことはある」人は日本が74%、米国76%、ドイツ69%、中国87%だった。

また、自分の個人データをIT事業者に提供していることを「よく認識している」「やや認識している」人は日本69%、米国68%、ドイツ58%、中国84%。

個人データの提供を「とても不安を感じる」「やや不安を感じる」割合は日本が78%だった。17年に比べ5ポイント低下したものの、4カ国では最も高かった。

(相川浩之)

[NIKKEIプラス1 2021年7月31日付]