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逆境でも腐らずに! 古典『葉隠』で読む仕事人の極意 『伝説の外資トップが感動した「葉隠」の箴言』

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『葉隠(はがくれ)』と聞いてピンとこない人も、「武士道といふは、死ぬ事と見つけたり」の言葉なら聞いたことがあるのではないか。この有名な一節が載っている書物こそ『葉隠』だ。江戸時代中期に、鍋島(佐賀)藩の藩士・山本常朝の口述を書き留めた、藩士の心構えをまとめた書である。

本書『伝説の外資トップが感動した「葉隠」の箴言』は、この『葉隠』の書全11巻の中から31本の"箴言(しんげん)"を選び、現代の働き方、生き方に通じる普遍的な原則を見いだして紹介したもの。著者の新将命氏は、ジョンソン・エンド・ジョンソンの日本法人など、外資系企業の幹部職を渡り歩いた経営者で、左遷や降格など、自らの苦い経験を引きながら、箴言の意味を読み解いている。

■「活私奉公」の教科書

「死ぬ事と見つけたり」の一節は、生と死を選択せざるを得ないときは、死を覚悟すべきだ、という意味である。これが一般的には、「死ぬ覚悟を迫っている」と解釈されるようになった。しかし、著者はそうではないという。これは、多くのしがらみや束縛といった保身の心から、自由になることを説いたものだというのだ。

保身か捨て身か、二者択一の判断が必要なそのときに、損得ばかりを考えていると発想や行動が縛られてしまい、いい仕事ができない。だから、保身の心を手放す覚悟を、普段から持っていることが大切なのだ、と説く。

現代のビジネスパーソンに置き換えると、致命的なのは「降格」や「左遷」、「解雇」だ。著者自身も、ある外資系企業の日本法人社長を務めていた頃、「これを言えばクビになるかもしれない」との覚悟で、海外にある総本社に反論したことがあった。その結果、事実、その会社代表を解任される。

ショックではあったが、後悔はないという。降格や解任も貴重な経験であり、保身や私利を忘れた仕事を続けると復活のチャンスも必ずやってくると断言。そうした実体験を踏まえ「死ぬ事と見つけたり」は、組織できゅうきゅうとせず、活力をもって自由に生きる「活私奉公」のためのヒントだと説く。

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