日常生活に深く関わる「お金」。あまりにも身近過ぎて、お金の本質についてじっくり考える機会はなかなかないかもしれない。
本書『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』は、お金が社会・経済の中でどのような役割を担っているのかという根本的なところから、借金や暗号通貨の仕組み、仕事や人生におけるお金の使い方などまでを解説したもの。投資家として活躍する著者が、14歳の頃の自分に向けて書いたもので、わかりやすい語り口が特徴だ。
著者の藤野英人氏は、資産運用会社のレオス・キャピタルワークス会長兼社長。
■日本人は「お金そのもの」が好き
著者はまず、「経済」とはお金を稼いでいる大人だけのものではない、と説く。子どもだって、服やジュースなどを親が、あるいは自分自身が買って使っている。つまり「消費者」として、お金の流れを生み出しているのだ。同じように、ニートや寝たきりの人だって消費者として社会に参加し、消費を生み、経済を動かしている。このように経済とは、互いに助け合う「互助」の関係が土台にあることを忘れてはならない。
さまざまな人の消費によって経済が回っているのだが、日本人は「貯金に偏りすぎている」と著者は指摘。個人金融資産約1900兆円のうち、現預金が約1056兆円あると言われている(2020年12月末時点)。これは日本の国家予算の10倍近い額にあたる。先進国のなかでも特有の現象で、著者は、日本人は「モノとしてのお金が大好き」なのだと評する。
そこで、お金をなんとなくためるのではなく、例えば株式投資などの選択肢も持つことで、社会全体を豊かにしようというのが著者の呼びかけだ。