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個々の持ち味が光る組織へ 職場の対話を促すポイント

多様なメンバーと働く 職場の対話術(完結編)

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NIKKEI STYLE

様々なバックグラウンドを持つ人と共に働くことが当たり前となった。かつて、日本企業の多くは「日本人・男性」が中心の同質性の高い組織だった。しかし、いまは違う。女性、シニア、外国人、障がいのある人、性的少数者(LGBT)、子育てや介護を担う人など、職場には多様なメンバーがいる。それぞれが持ち味を生かしながら気持ちよく働くには、互いの持つ背景を知り、尊重し合うための「対話」が欠かせない。先進企業では、どんなコミュニケーションの工夫があるのか。

「多様なメンバーと働く 職場の対話術」では、こうした問題意識を基に、6つの事例から職場でのコミュニケーションのあり方に注目してきた。

ダイバーシティ(人材の多様性)の時代。連載完結にあたり、執筆者であるジャーナリストの野村浩子氏に、取材した企業の事例を基に「対話」を促すためのポイントをまとめてもらった。

◇ ◇ ◇

職場での対話を促すには、「共通言語」が必要である。個々のメンバーが抱える背景や言葉の違いを乗り越え、皆で価値観を共有するための言葉である。

経営トップは、この「共通言語」を社内に示す必要がある。そして、これをよりどころに個々のビジネスパーソンは自身の職場で「対話」し、互いの理解を深めていく。多様な人材を生かすには、こうしたトップダウン、ボトムアップが車の両輪として欠かせない。それが、企業の成長につながっていくのだ。このことを前提に、本連載で取材した企業各社の取り組みを改めて振り返ってみたい。

まず「マイノリティー(少数派)のなかのマジョリティー(多数派)」として、企業各社が対応を急ぐ女性の活躍に目を向けてみよう。そこで、経営トップが発するメッセージの意義に焦点を当てたい。

グループを挙げて、ダイバーシティの推進に取り組んでいる東急。同社の高橋和夫社長は、ダイバーシティ経営を説く中で、特に女性の活躍推進の意義を強調する。「当社の成長にとって、お客様の考え、気持ちを理解できるよう、女性社員がさらに活躍し、サービスや商品などに女性の考え方や価値観を反映することは大変重要だ」と繰り返す。

東京急行電鉄(現・東急。鉄道事業は現・東急電鉄に分社)は1999年に改正労働基準法などの施行で女性の深夜労働が解禁されたのを機に、「優秀な人材を確保しよう」と技術職の女性の採用を始めた。

第4回「女性迎えた鉄道の現場 『いいよ、俺やるから』は禁句」で触れたように、泊まり勤務などに入る女性のため、男性用となっていた宿泊室を改装して、男女それぞれの宿泊室を設置。「女性を『ちゃんづけ』で呼ばない」など、女性社員を受け入れるにあたって、研修も行った。

「私は会社に必要とされている」、奮起の原動力に

ただし、24時間体制で鉄道を保守・管理するような現場の場合、かつては「風呂上がりの男性社員が、パンツ1枚で歩いているような職場だった」。こう笑うのは東急電鉄の高橋彩子さん。高橋さんは広報CS課長として、今回の取材に立ち会ってくれた。

実は高橋さんは建築士。2002年に東京急行電鉄に2人目の女性技術職として入社し、夜間工事にも立ち会った女性社員の第1号だ。社内でのびのびと振る舞えるようになったのは、入社して10数年ほどたってからだという。

 入社当時は「男性と同じように働くこと」でまずは1人前と認められることを目指し、その後は「女性ならではの視点」を求められた。結婚や出産も経ながら、女性の視点、母親の視点を生かして、駅トイレの照明を変えたり、ベビーカーを引く親にも優しいトイレやエレベーターを開発したりした。会社に貢献しつつも、育児との両立にどこか「私は迷惑をかけている」という思いがぬぐえなかった。

ところが10年代に入り、会社は従来以上に女性の活躍に力を入れるようになった。多様化する社会のニーズを捉えるため、同社の成長に欠かせないという意識が高まっていた。「会社の空気が変わり始めた」(高橋さん)。ダイバーシティ推進を看板に掲げる部署が発足し、企業風土や社員のマインドを変えると、会社から明確なメッセージが発せられた。

そうしたなか、高橋さんは第2子の産後8週間の休み明けの翌日に管理職採用試験を受けるように促される。社内の昇進昇格の時期から逆算しての要請が、たまたまそのタイミングとなった。「(女性を登用するという)会社の本気度を感じた」。育休明けに管理職に昇進。入社して10数年、ようやく「私は会社に必要とされている」と思うことができたと振り返る。

高橋社長は東急電鉄の取締役でもあり、冒頭で紹介したように折に触れ、「女性の活躍推進は喫緊の課題である」というメッセージを発している。グループの中核企業の経営トップから、管理職から、女性の活躍を本気で進めているというメッセージを受け取ることで、「ここにいてもいい。必要とされている」と思えるようになったのだ。

管理職に問われるトップメッセージを生かす力

女性に限らず、外国人、障がいのある人など組織でマイノリティーとなる人たちは、「自分はここにいていいのだろうか」「受け入れてもらえているか」といった不安を抱えがち。これを払拭するには、会社から「多様な人材を生かす」という力強いメッセージを発信することが必要である。そして、それを実践するのが、職場の管理職である。あらゆるメンバーが、自由に発言できるような心理的安全性が確保された環境をつくること。これも管理職の大きな役割である。

管理職はまた、トップからのメッセージを咀嚼(そしゃく)して、現場マネジメントで具体化することも求められる。第1回「コロナ下の上司 声かけや1on1で育児社員の不安を解消」に登場したキリンビールの広域販売推進統括本部セールスサポート部副部長、渡辺謙信さんの取り組みが参考になる。

渡辺さんは、コロナ下で布施孝之社長からのメッセージを受けて、部下との対話軸を変えたという。「仕事の意義の捉え方が変わることは、全社員が望む『幸せで豊かな人生』につながる」という言葉を聞き、自分なりにその意味を深く考え、子育て中の部下に対して「仕事より家庭、健康」という声がけをするようになった。

子育てや介護、健康問題など、社員はそれぞれ異なる事情を抱えている。多様な人材を生かすには、まずは経営トップが明確なメッセージを発信することが必要だ。それを受け止めて現場に根付かせる管理職の力も問われる。

企業のミッション、ぶれない評価軸に落とし込む

「我々はここを目指していこう」「こうした価値観を大切にする」--価値観が多様な社員が共に働く時代を迎え、企業のミッション、バリューを明確にし、社員全員の「共通言語」として対話をしていくことの大切さが高まっている。

この点で参考になるのが、第3回「メルカリ『やさしい日本語』 多様な人材の力引き出す」で取り上げたメルカリだ。

同社は「新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創る」をミッションに掲げ、国籍、性別、障がいの有無などに関係なく世界中の人が利用できるマーケットの創造を目指す。山田進太郎社長は、そのためには「多様性に富んだメンバーの様々な視点やアイデアを尊重し、受け入れていく環境づくりが不可欠だ」とダイバーシティ推進を経営戦略のなかで明確に意義づけ、折に触れて社員にメッセージを発している。

それだけではない。同社はミッションを実現するためのバリューとして、「Go Bold(大胆にやろう)」「All for One(全ては成功のために)」「Be a Pro(プロフェッショナルであれ)」という3つを設定。障がいのある人も外国人もすべての社員に、このバリューの発揮が求められる。採用や人事考課の評価項目に、これらバリューが組み込まれているという。

管理職が社員と面談する際も、このバリュー軸に沿って対話がなされる。「Go Boldで、高い評価です」。第3回に登場した聴覚障がいのある社員、村山和也さんは、労務担当の上司である東江(あがりえ)夏奈さんから、評価面談でこう告げられた。

たとえ失敗しても、難易度の高いプロジェクトに挑戦して新たな可能性を探ったり、周囲にいい刺激を与えたりすれば、「Go Bold」であるとして評価される。

村山さんは、データ読み込み業務を担当するアノテーションチームのメンバー。前例もルールもない新しい取り組みを、他部署の人と調整しながら進めるのがうまい。調整力に加え、メール中心のコミュニケーションでは、村山さんに聴覚障がいがあることに気付かない社員もいるほど、文章の表現力も秀でている。そこで「Go Bold」というバリューで、東江さんは村山さんを高く評価しているという。

多様な人材を生かすためには、ぶれない評価軸を持つことが大切だ。全社員で共有するバリューは、性別、国籍、障がいの有無など目に見える属性の違いを超えて、社員を束ねる力ともなる。

◇ ◇ ◇

改めて、ポイントをまとめてみよう。経営トップは、わが社でなぜダイバーシティ推進が必要なのか、どんな価値観を共有するかを、社員に繰り返し発信する必要がある。そのメッセージを受け止めて組織にいかに浸透させるかは、現場管理職の「対話力」にかかっている。組織で多様性を価値に変える、そのカギとなるのが「対話」である。すべてのビジネスパーソンにとって、「異なる人」との「対話」が、自身の成長につながり、そしてまた組織の成長につながるのである。

野村 浩子(のむら ひろこ)
 働く女性向け月刊誌「日経WOMAN」編集長、日本経済新聞社編集委員、淑徳大学教授などを経て、2020年4月東京家政学院大学特別招聘教授、東京都公立大学法人監事。著書に「女性リーダーが生まれるとき」(光文社新書)など。

(おわり)

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