方向音痴克服のはずが… 回り道で気づく散歩の醍醐味『方向音痴って、なおるんですか?』

最近は地図やナビゲーションアプリが発達しているため、道に迷うことも少なくなったのではないだろうか。だがどんな工夫をしても簡単には目的地にたどり着けない、生粋の「方向音痴」という人もいる。本書『方向音痴って、なおるんですか?』の著者もその一人だ。

スマートフォンのナビ機能を使っても道に迷う、気づけば元いた場所に戻っている、個室居酒屋でトイレから戻ってこられない……その音痴ぶりはなかなかのもの。本書はそんな著者が、認知科学者や地図、地形などの専門家のアドバイスを得て、方向音痴の克服を目指すエッセーだ。曳舟や神保町、谷中など都内各所を実際に歩き、道に迷わない実践的なコツをつかんでゆく。

著者の吉玉サキ氏はライター・エッセイスト。登山経験者で、山では道に迷ったことはないそうだ。

地図と現実の目印を2つ以上もつ

最初にヒントをもらいに行くのは、方向音痴の研究をしている認知科学者、成城大学の新垣紀子教授のところである。教授との対話を通して、著者は頭の中で図形を回転させるような「視点の移動」が苦手だということがわかってくる。町を上から見るイメージがつかみにくいため、動いていると周囲との位置関係が把握できなくなってしまう。

空間的なイメージ操作の得手不得手は個人差があるものだそうだ。そこで、新垣教授は具体的なアドバイスをおくる。「地図」と「現実の景色」を照合した目印を2つ以上つくること、地図を持つときは「地面と平行に」持つ、などだ。実際に著者がアドバイス通りに神保町かいわいを歩いてみると、少し迷っても正しい道へ戻れるなど、かなりの改善が見られた。

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