2021/7/26

チーム初の長めの男性育休、そのとき上司は…

後藤さんは上司の木村さんが、社内セミナーで「後藤さんは育休を通して成長した」と言ってくれたことが嬉しかったという

既に男性育休の取得率が5割を超える同社とはいえ、「(男性育休の)意識はまだまだ根付いていない」(木村さん)という。

後藤さんは木村さんチームで長めの育休を取得した男性社員の第1号となった。夫婦とも第2子の誕生後、実家の支援を得にくい状況にあった。後藤さん夫婦は社内結婚。妻のキャリアについても話し合って出した結論だった。

改めて、先駆者の後藤さんが育休取得を申し出た際は、どんなやりとりがあったのか。当時の2人の対話に注目してみたい。

後藤さんは、おそるおそる申し出た。「第2子が生まれるにあたって、育休を1カ月半ほどとらせていただきたいのですが……」

木村さんは間髪を入れずに、こう応じた。「それはぜひ取得してください」

「力強い励ましの言葉をもらい、ほっとした」と後藤さんは振り返る。

2人は労務担当チームで長年、上司・部下として働いてきた。後藤さんが「育休をとることで、評価が下げられる」といった心配をすることなく申し出ができたのは、上司の木村さんとの信頼関係もあっただろう。

では、木村さんはどうだったのか。前例のない申し出に驚きや戸惑いはなかったのだろうか。

木村さんは2人の子供が生まれたときは、配偶者出産休暇は取得した育休はとらなかった。「子育ても妻中心だった」との反省から、男性部下に育休を勧めている

木村さん自身は、2人の子どもが誕生したとき、育休を取らなかった。「当時は男性が育休をとると評価が下がるという雰囲気だった」と苦笑する。

ではなぜ、後藤さんから申し出を受けた際、躊躇(ちゅうちょ)せず、「ぜひ取得を」と伝えられたのか。それは、労務担当として社会の変化を肌で感じていたからだ。

子育て支援策の充実を背景に産休・育休を取得する女性社員は増えている。だが、子育て中の女性は、育休や育休復帰後の短時間勤務などでキャリアに後れを取りがちだ。家庭負担が女性に偏っていては、人的資源を生かしきれない。

木村さんはかねてより「男性も女性も、仕事と家庭生活、どちらかを犠牲にしないといけないのはおかしい」という問題意識を持っていた。「男女問わず、仕事と育児、また介護を両立する社員を企業が支える時代を迎えている」と実感していたという。

だから、後藤さんから育休取得の申し出があったとき、「当然だろう」と思ったという。職場結婚をした妻の働きぶりを知っていたことから、状況を瞬時に受け止めたようだ。

職場への影響 全員で話し合い業務を再配分

多くの企業では今なお、男性社員が育休取得を申し出た際、上司から否定的な言葉をかけられることが少なくない。「出世をあきらめたのか」「妻が休みを取るんじゃないのか」といったものだ。

加えて、同僚から「穴埋めが大変だ」という声も上がりがちだ。「女性の育休は長いので代替要員を入れることも可能だが、男性の(1カ月~数カ月といった)長めの育休は中途半端な長さなので、職場での穴埋めが求められて対応が大変だ」(木村さん)。実際、内閣府が21年4~5月に約1万人を対象にインターネットで実施した調査でも、同僚の男性が育休をとることに3割超が「抵抗感」を覚えると回答している。

それでは、後藤さんが育休に入るにあたり、木村さんは管理職としてどう動いたのか。

まず、木村さんは部のミーティングでこう発表した。

「後藤さんが今度、育休を取ることになった。申し出を受けて、私は応援したいと思う。ついては皆、協力してください」

木村さんの言葉を受けて、図らずも女性社員の間から拍手がわき起こった。「夫にもっと育児に協力してもらえたら」といった思いを抱えている短時間勤務の女性社員らが、「男性の育休取得、応援します」と笑顔で拍手を送ったのだ。

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