コロナ禍により、「40代おじさん」の夫婦関係に危機が忍び寄っている。自分は幸せなのに、その妻は不幸に? 博報堂生活総合研究所の前沢裕文氏(44歳)が今回調べたのは40代女性の意識。「生活定点」と「新型コロナウイルスに関する生活者調査」から探ったところ、コロナ禍に背負っているストレスが如実に表れた。もともとあった40代の夫婦間ギャップはさらに広がり……夫である40代おじさんは絶体絶命!?

 オリンピックをはじめスポーツの国際大会が開催されると、日本の選手と海外の選手とのメンタリティーの差、特に「自信」「自己肯定感」の差についての議論を少なからず目にします。

 最近では、メジャーリーグベースボールの大谷翔平選手、ゴルフの松山英樹選手や笹生優花選手など、日本人スポーツ選手の活躍は目覚ましいものがありますが、他人の活躍と自分の活躍はまた別のお話。40代おじさんである私も、「中年の星」と呼ばれるベテランに肩入れし、その活躍ぶりからおこぼれの自信を頂戴したりするわけですが、それはドーピングのようなものであって、一時の幻。興奮が冷めれば借り物の自信は消え去ってしまいます。

 そういった自信のなさは、時に日本人の特質であるかのようにいわれ、自分たちでもそう思い込んでしまいますが、悲しいかなそう捉えたとしてもあながち的外れとは言い切れません。なぜなら、日本人の半数以上は自分に自信がないのですから。

 博報堂生活総研の長期時系列調査「生活定点」の2020年調査の結果では、「自力自信(自分自身の力による自信)がある」と答えた生活者は全体平均で43.6%にとどまっています。また、40代おじさん、男性平均、女性平均の数値を見ても、それぞれ最高値だった1992年からこの約30年間で大きく下がっていることが分かります。40代おじさんは、2014年に男性平均を1ポイント上回ったのを最後に、ここ3回の調査でいずれも男性平均を下回る結果となりました。

出典:博報堂生活総合研究所 生活定点(以降、出典表記のないものはすべて生活定点のデータ)
出典:博報堂生活総合研究所 生活定点(以降、出典表記のないものはすべて生活定点のデータ)

 もちろん、一言で「自分の力に自信がない」と言っても、具体的にどういうことに対して自信がないかは人それぞれでしょうが、ここに一つ気になるデータがあります。

40代おじさんは「家族への態度・姿勢」に自信がない

 20年3月に生活総研が実施した生活者調査で、自分の「健康」「知識や教養」「性格や人柄」「給料やこづかいなどの収入」「家事(掃除・洗濯など)」など、30の項目に対する自信の有無を尋ねました。

 すると、40代おじさんは、下記表中の自力自信に関する項目で男性中最下位の結果となったのです(表には記載していない「依存自信(何かに属していることによる自信)」4項目と合わせ、計9項目で男性中最下位)。

出典:博報堂生活総合研究所 生活者調査(全国/15~69歳男女5000人/インターネット調査/2020年3月実施)
出典:博報堂生活総合研究所 生活者調査(全国/15~69歳男女5000人/インターネット調査/2020年3月実施)

 それどころか、1位だった項目は一つもないうえに、2位に入った項目すらありません……。40代おじさんは、様々なことに対してとりわけ自信がない人たちなのです。

 では、どうしたら40代おじさんは自信を持てるのでしょうか?といきたいところですが、今回取り上げたいのは、周囲にいる人たちの話。中でも最も大きな影響を受けていると思われる配偶者についてです。

 実際、「家族に対する自分の態度や姿勢に自信がある」と回答した人の割合は5割を割り込んでいます。愛情表現や日ごろの感謝が足りていないとか、家事・育児をあまりしていないとか何らかの負い目があるわけで、そのことに対して家族に不満がたまっていても不思議はありません。特に、妻の心の内は気になるところではないでしょうか?

 そこで、今回は「生活定点」と「新型コロナウイルスに関する生活者調査」から、40代女性の意識について調べてみました。コロナ禍の影響によるストレス、家庭生活や家族(夫)への不満など、彼女たちの生声も併せてご紹介します。

 なお、厚生労働省の「人口動態統計」によると、初婚夫婦の年齢差は、00年、10年、15年いずれも1.7歳となっており、40代おじさん(43~49歳)の配偶者は平均して1.7歳若いので41~47歳となります。そのため、ご紹介する40代おじさんの配偶者のデータ=40代女性のデータとしています。また、「生活定点」の40代女性のうち既婚は84.8%(離別7.4%、死別0.6%、未婚6.5%、不明0.6%)です。

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