蚊を入れずに風を入れる 網戸の劣化、交換目安は5年
ウイルス感染を防ぐためのこまめな換気の習慣は定着したが、夏は窓を開けると招かざる客、蚊が入るのが困りもの。蚊の侵入を防ぎつつ、効果的に風を通す方法はないかを探った。
窓を開け閉めする機会が増える夏場は、どこからともなく室内に蚊が入ってくる。網戸があれば蚊の侵入の多くは防げるはずだが、それでも頻繁に入ってくるなら網戸の破れや穴を疑おう。
▼蚊対策(1)網戸を点検 害虫・害獣の駆除と予防管理を手がけるダスキンターミニックス事業部の三宅稔さんは「網戸の破れを放置している人は多い」と話す。「網戸ネットの多くはプラスチック素材が使われている。紫外線や熱、水で劣化しやすいので定期的な交換が必要」という。
試しに家の網戸をチェックしよう。色があせていたり、触るとたわんだりするようなら交換時期。環境にもよるが、目安は5年に1回ほどだ。専門業者に依頼するか、DIYが得意ならホームセンターで材料を購入して自力で交換することもできる。換気のために玄関を開けておきたい場合は、防犯機能付きの網戸を後付けする手もある。
▼蚊対策(2)水たまりをなくす 網戸は新しいのに蚊に悩まされている家は「蚊が好む場所を作り、発生させているのでは」と三宅さん。ひとつは水たまりだ。バケツ、植木鉢の受け皿、空き瓶など、わずかでも水がたまっていたらボウフラがいると思っていい。「水はこまめに捨てる。泥水がたまりやすい雨水口や排水溝は定期的に掃除を」
もう一つは雑草や樹木だ。ヤブカが好んで隠れる場所になるので、雑草は刈り、伸びすぎた庭木は剪定(せんてい)を。「家のまわりをきれいにするだけで蚊の被害は大幅に減らせる」(三宅さん)
▼蚊対策(3)忌避剤を活用 そのうえで蚊取り線香や虫よけ剤を使うと忌避効果が高まる。風が通る所では薬剤が飛ばされてしまうので「ドアや窓は閉め、そのまわりで炊く」(三宅さん)。一般に蚊が飛べるのはマンションの3階程度の高さまでとされるが、人を追う種類の蚊もいるので、エレベーターなどでマンションの高層階に入り込むこともある。こういう場合も薬剤をうまく使えば「室内への出入りや窓開けのときに蚊を連れ込む確率が減る」。
蚊の対策が万全になったら、風を通す工夫だ。新型コロナウイルス感染症への対策として、1時間に2回以上、窓を数分間開けての換気が推奨されている。だが窓を1カ所開けただけでは部屋の空気は動かない。「室内に風を通すには、風の入り口と出口を作る必要がある」と東京都立大学名誉教授で建築環境学が専門の須永修通さんはいう。
大切なのは風の通り道をイメージすること。どこから入ってどこに抜ければ全体の空気が動くのか考え、窓やドアを開ける。開口部は対角線や対面の位置にあるといい。「できるだけ遠くから風を入れると、風は長い距離を通って出ていく」と須永さん。窓2つの配置が直角で近いと風はショートカットで移動し、室内の空気はあまり動かない。
空気は暖かければ軽いので上昇し、冷たいと重いので下降する。この性質を使った温度差換気も効果がある。「北側の高い位置に窓があれば、天井近くにこもった熱い空気が排出される」(同)
こうした法則を当てはめると、一般的な間取りのマンションは、ベランダ側と玄関側の部屋の窓を開けて風を通すのが最も換気効率がいい。
戸建ては南北、東西など対面した2カ所の窓やドアを開ける。トイレの窓、階段の小窓、2階の廊下にある窓など北側の窓を開け、1階から入れた風を階段や吹き抜け経由で通すこともできる。
換気には部屋にこもった熱や湿気の排出効果もある。冷房の節約やカビを防ぐためにも積極的に取り組もう。また「風を通すと体の表面から熱が奪われるので涼しく感じる。熱中症のリスクも減らせる」と須永さん。
エアコンや扇風機、換気扇も併用しよう。湿度が高い日はエアコンを使いながら窓を少し開けて換気。窓がない部屋や、短時間に一気に換気したいときは台所から遠い窓を開け、風量の大きい台所の換気扇を回す。扇風機を窓に向け、空気の排出を促す手も。扇風機は天井付近の熱だまりをかき回したり、湿気を飛ばしたりにも活躍する。
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洗濯物に付いて侵入
人の血を吸うのはヒトスジシマカ(ヤブカ=写真)とアカイエカ。前者はデング熱やジカウイルス感染症を、後者は日本脳炎を媒介する。吸血するのは産卵を控えた雌だけ。水たまりに産卵し、ボウフラは1週間で成虫になる。「ヒトスジシマカはヤブに潜んで待ち伏せし、洗濯物にも付いてくる。アカイエカは人を追いかけてくる」(三宅さん)。越冬準備に入る9月、蚊は最も活動的になる。ヒトスジシマカは卵で、アカイエカは成虫のまま越冬。「見つけるのは無理。発生させない環境づくりが最大の防御です」(同)
(ライター 奈良 貴子)
[NIKKEIプラス1 2021年7月10日付]
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