2021/7/19

「アメリカ人でも、ファミリーネーム(苗字)で呼ばれたほうがしっくりくるという人も中にはいる」

「外国人の社員が何を思っているか、こうした研修を通して知りたいと思って参加した」と話す佐藤さん

「アジア系の人の中には、ファミリーネーム(苗字)で呼ばれて寂しいと思う人もいる。日本人の社員は、アメリカ人には親しみを込めてファーストネームで呼びかけるのに、アジア系の人にはそうしない……。そのため、アジア系の人たちが日本人から少し距離を置かれていると感じることもある」

参加したソニーグループ、グローバル経理センターの佐藤美和さん(41)は、外国人社員と仕事をすることが多いが、ハッとした。「その人によって心地よい呼ばれ方は違うのですね」。早速職場で、どんな風に呼んでもらいたいのか、本人に直接確認するよう心がけているという。

日本人はどう映る? 異文化の視点を理解し対話を

今回の異文化コミュニケーションのワークショップは、日本人社員の言葉や振る舞いのどんな点が、外国人社員にとって「奇妙」に映るのか、「違和感」を抱かれるのか、社内で共有することで「異文化理解」を進めようというもの。

ワークショップのテーマは、17年に日本オフィスで働く外国人社員向けにDIVI@Sonyが行ったアンケート調査を参考にしている。具体的なシーンは、先述したように外国人社員の実体験をもとに設定された。

コロナ禍前の19年度は19年11月に東京都品川区、20年2月に神奈川県厚木市で体験型の異文化コミュニケーションワークショップを開いた(写真提供:ソニーグループ)

ワークショップは、DIVI@Sonyが物語、そして質問と答えの選択肢を用意して、参加者が意見交換をしながら答えを探っていくというゲーム形式で進められた。現実の課題を踏まえた設定、そして進め方の工夫によって、参加者は楽しみながら議論を深めることができた。対話を促す、活性化する仕掛けづくりも重要なことが分かる。

参加した佐藤さんは「日本人は外国人社員に対して気を遣い過ぎか、あるいはまったく(思いに)気づかないか。両極端に振れているのではないか」と考えた。

中国人社員の張さんは、設問に対する答えが、同じ国籍の社員であっても人それぞれであったことから「国籍によるステレオタイプで、相手を決めつけてはいけない。人にはそれぞれ個性がある」と改めて感じたという。

外国人社員との意思疎通で、日本人が心がけたい3つの点
1)飲み会と会社など、場面によってコミュニケーション・スタイルが変わることに戸惑う外国人も。互いに心地よい会話体を探る
2)「呼び名」に象徴されるように、同じ国籍でも感じ方はさまざま。思い込みを排して、個々人の個性に着目する
3)外国人社員の「違和感」を見える化して、日本人の「当たり前」を問い直す議論の場を設ける

外国人社員が日本人とのコミュニケーションの中で、何を「奇妙」だと感じるのか、これを「見える化」して、対話の場を重ねていくことで、互いの背景にある文化やバックグラウンドの違いが少しずつ見えてくるのだろう。

野村 浩子(のむら・ひろこ)
働く女性向け月刊誌「日経WOMAN」編集長、日本経済新聞社編集委員、淑徳大学教授などを経て、2020年4月東京家政学院大学特別招聘教授、東京都公立大学法人監事。著書に「女性リーダーが生まれるとき」(光文社新書)など。