2021/7/19

同僚らの体験集めた「ある外国人の日記」からクイズ

「ある外国人ステファンの日記」は、ここで使われた。参加者同士で議論するにあたり、まず冒頭の飲み会体験が紹介された。

今回のテーマの本題は、ここからである。ステファンさんの物語は、こう続く。

◆「ある外国人ステファンの日記」より

 飲み会の翌日午後、他部署を交えての会議があった。

イラストはイメージ=PIXTA
 驚いたことに、前の晩に「俺」と言っていた人が、突然「私は~」と切り出し、「私どもは~と考えますが、如何(いかが)でしょうか」と丁寧語で話し始めた。

 発表者は他の参加者とアイコンタクトを交わすことはなく、自由な発言もほとんどなかった。会議は録音も録画もされておらず、会社として正式なスピーチを要求されているわけでもない。

 混乱してしまった。

物語がここまで紹介されたところで、参加者に問題が出された。

【問題】ステファンさんにとって、この会議の光景はどのように見えたでしょうか。その理由も考えてみてください。

選択肢として、以下4つが提示された。

1)日本人のチームメンバーは実は仕事が好きではなく、イヤイヤやっている。
2)日本人はプライベートでは仲良くなれるが、仕事の人間関係は実はよくない。
3)みんなが初対面のふりを演じるお芝居をしている。
4)日本ではフォーマルな場では敬語の間違いをしてはいけないので、みんなが緊張している。

ワークショップの参加者はそれぞれ意見を出し合い、笑いあり、突っ込みありで、大いに盛り上がった。

会議の光景、「初対面のようなふり」に映る

一通り意見が出たところで、主催者であるDIVI@Sonyのメンバーから答えは3番だと明かされた。「ステファンの日記」から、心情が次のように説明された。

◇ ◇ ◇

ステファンは、会議では皆が事前に用意した台本を読み上げているようで、芝居のような印象を受けた。

既に親しい間柄なのに、なぜ急に改まった話し方をするのだろう。なぜ皆、初対面のようなふりをするのだろう。「公式」の場で改まった言葉を使うと、その人の感情が見えなくなってしまう。形式的な印象を受ける。しかし、日本人は誰もそれを「奇妙」なこととは思っていない。

ドイツでは一般的に、社内のプレゼンテーションでも、部門全体のミーティングでも、メールでも、文体を変えることはほとんどない。互いに見知った者同士では、カジュアルなコミュニケーション・スタイルだ。

日本でも、公式、非公式の使い分けなどせずに、親しい間柄ならカジュアルにコミュニケーションをとればいいのではないかと思ってしまう。

◇ ◇ ◇

日記を綴った設定の「ある外国人ステファン」は、日本人のコミュニケーション・スタイルをみて、このように「奇妙」な感覚を抱き、疑問を持ったのである。

中国人エンジニアの張さんはワークショップで、フルネームで呼ぶのが一般的という母国での状況も紹介した

ワークショップに参加したソニーのソフトウエア技術部門のエンジニア、中国人社員の張伊喆(チョウ・イテツ)さん(30)は、分かるなあと頷いた。

張さんもまた、居酒屋に上司や同僚と飲みに行ったところ、いつもは冷静沈着な上司がハイテンションになり、最後にハイタッチを求めてきて面くらったという。

公私で上司や同僚の振る舞いが大きく異なるため、「相手との距離感をつかみづらい。親しみをもっての表現がどこまで許されるのか分からない」と戸惑いを見せる。先日も課長との1on1面談で、うっかり敬語を使わず話してしまい「失礼だったかな」と終了後に気になったという。

日本人にとっては、職場の飲み会とオフィスでは、会話のスタイルが違うのは当たり前。そんな「当たり前」は、外国人社員にとっては「奇妙」なことに映る。ワークショップの議論を通して、多くの人にとっての気づきとなった。

心地よい名前の呼ばれ方、実は相手次第で異なる

もう1つ、盛り上がった話題がある。外国人社員の名前の「呼び方」である。

「外国人社員は、自分の名前をどのように呼んでもらいたいと思っているでしょうか」

こんな問いかけを受けて、参加者から様々な声が上がった。

「欧米人はファーストネームで呼ぶことが多いけど、アジア系の人はたいていファミリーネーム(苗字)で呼ぶのが一般的だと思います」と、ある日本人社員。

「中国では、(自分の名前を例にすれば)『張伊喆』とフルネームで呼んで、『さん』をつけないのが一般的です。日本では私の場合、『張さん』か『伊喆さん』。どちらで呼ばれてもいいです」。前出のソフトウエア技術部門のエンジニア、張さんは母国の状況も紹介しつつ、こう発言した。

これを受けて今回のワークショップの講師、日本語教育研究所理事の鈴木有香さんは、こう解説をした。

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日本人はどう映る? 異文化の視点を理解し対話を