はやぶさ帰還タイミングでウソ

はやぶさのカプセル回収でも当初は米国に協力してもらう予定だった。

はやぶさのカプセルは、当初、2006年1月に米ユタ州の砂漠に降下して回収する予定でした。ちょうど同じ時期に、米国の彗星(すいせい)探査機「スターダスト」も地球に帰還を予定していました。スターダストはヴィルト第2彗星の尾を通過して彗星から放出されたチリを持ちかえることになっています。月以外の太陽系天体からサンプルを持ちかえる点では先を争うライバルです。

もし、はやぶさの方が先に地球に戻ると米国が知ったら、カプセル回収に協力してもらえないのではないか。そう考えてNASAには、はやぶさが帰還する日を、スターダストよりも1週間遅くなると伝えました。実際にはスターダストよりも1週間早い予定でしたが、ウソをついたのです。土壇場で「都合で少し早くなりました」と変更を知らせればいいと考えたのです。

NASAもスターダスト帰還予定日を正直に伝えていなかったのかもしれません。40歳前だった私には、こうした駆け引きがとても面白く感じられました。NASAの窓口になっていた担当者に「君は日本人で最もよくNASA本部に来る男だ」と言われたのも懐かしい思い出です。

ただ打ち上げが1年延びたため、はやぶさのカプセルの回収場所は米国ではなくオーストラリアに変更になりました。

[日経産業新聞 2020年5月18日付]

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