ソーシャルビジネスで会社も成長 狙うは経営の二刀流『9割の社会問題はビジネスで解決できる』

社会問題を解決するのはNPO法人や行政などの公的組織――。ずっとそう思い込んでいた。しかし、本書『9割の社会問題はビジネスで解決できる』を読むと、ビジネスパーソンこそが社会問題を解決することができる、いやそうすべきなんだということがわかる。

著者の田口一成氏は、1980年生まれ。多数の社会起業家を支えるプラットフォーム、ボーダレス・ジャパン(東京・新宿)の社長として、世界15カ国で40のソーシャルビジネスを展開している。従業員は約1,500人、グループ年商は55億円を超えるという。

ソーシャルビジネスは、事業を成功させ会社を成長させながら、同時に社会問題の解決をはかることだ。本書はソーシャルビジネスに対する考え方や成功のためのノウハウ、ボーダレス・ジャパンの企業活動の軌跡やそれにより実現した仕組みなどを明らかにしたものだ。田口氏本人やグループが生んだソーシャルビジネスの実例が豊富に取り上げられている。

ハーブ茶、「妊娠・授乳期」狙う

例えば貧困や差別、環境問題……。社会問題とは、効率を追い求めるほとんどの企業がビジネスとしては「もうからない」と手を出さず、放置され、生み出されたものだ。そうであれば、効率が悪くても成り立つようにビジネスを「リデザイン」することで解決に向ければいい。田口氏はそう説く。

そのリデザインに必要なのは、「高い付加価値」。例えば、田口氏が立ち上げたハーブ商品を販売する会社、AMOMAのケースだ。

もともとの課題はミャンマーの小規模農家の貧困にあった。農家が栽培していたのはたばこの葉だったが、農薬など高い栽培コストがかかる上に買い取り価格も乱れやすい。コストを補うために多額の借金も抱えていた。そこで田口氏らは農家に働きかけ、ハーブの有機栽培に変更し、買い取り保証をする事業を始めた。

しかし収穫したハーブはどうするのか。立ち上げ当初、日本にハーブティーを飲む習慣はほとんどなかった。そこで、ハーブの利用法を調べ尽くした結果、「妊娠中と授乳期専用のハーブティー」というアイデアにたどり着く。カフェインのあるお茶やコーヒーが飲めない時期に、母体に好影響があるというハーブとして売り出したのだ。評判は口コミで広がり、いまや多くの産婦人科で推奨される商品に育つ。

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