「モスバーガー」が2021年3月に発売した食パンが、発売初日に約9万5000斤売れた。その後も売れ行きは好調で、販売数量は累計22万斤以上。1斤4枚切りで600円(税込み)という価格ながら多くの支持を集めている。商品名は、「バターなんていらないかも、と思わず声に出したくなるほど濃厚な食パン」。長いネーミングで人々の興味関心を引き、さらに商品の特長も伝えている。

モスバーガーの「バターなんていらないかも、と思わず声に出したくなるほど濃厚な食パン」。4枚切り600円(写真提供/モスフードサービス)
モスバーガーの「バターなんていらないかも、と思わず声に出したくなるほど濃厚な食パン」。4枚切り600円(写真提供/モスフードサービス)

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 モスバーガーを展開するモスフードサービスが2021年3月に新たに発売し、発売初日に約9万5000斤を売ったテークアウト用の食パンがある。商品名は、「バターなんていらないかも、と思わず声に出したくなるほど濃厚な食パン」だ。製造は山崎製パンで、毎月第2、第4金曜日限定の予約販売。6月11日までに合計7回販売し、累計22万斤以上を売っている。

 発売初日の販売数が突出しているのは、モスバーガーが食パンを売るという意外性に加え、長いネーミングが多くの消費者の興味関心を引いたためと思われる。新商品の食パンは、21年2月の発表後、さまざまなメディアに取り上げられたが、「どのメディアからも、『なぜ食パンなのですか?』『なぜこのネーミングなのですか?』の2つは必ず尋ねられた」(モスフードサービスの会長・社長室、広報IRグループ、チーフリーダーの松田匡央氏)。

 この食パンは、発売前にもかかわらず複数のYouTubeチャンネルで取り上げられた。新商品なら、発売後に「食べてみた」という内容の動画がアップされることは多いが、発売前の「まだ食べていない」段階での動画はほとんど例がない。ここにも、人々の新商品への期待、関心の高さが表れている。

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特長まで一気に伝えるネーミング

 新商品の商品名は、ただ長いだけではない。その長さで人々の気を引いた先には、もう1つの役割がある。それは、商品の特長を伝えるという役割だ。一般的に、食パンの側面や断面は白いものが多いが、この食パンの側面や断面はやや黄色みがかっている。これは、バターや卵を一般的な配合よりも多く使っているためだ。「バター」や「濃厚な食パン」といった特に重要なキーワードを盛り込みながら、商品名がそのまま商品説明になっているのだ。

やや黄色みがかっているのが特長。バターや卵を一般的な食パンの配合よりも多く使っている(写真提供/モスフードサービス)
やや黄色みがかっているのが特長。バターや卵を一般的な食パンの配合よりも多く使っている(写真提供/モスフードサービス)

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