伊藤さん「新しい役所をつくれば状況は改善しますか」

子ども庁創設には菅義偉首相が強い意欲を示しています。子ども関係の施策は厚労省や文部科学省、内閣府などが関わりますが、こうした省庁間の縦割りを廃し、総合調整機能を持たせる方針です。

子どもを取り巻く環境は厳しいです。18歳未満の子どもの貧困率は13.5%(18年、国民生活基礎調査)と7人に1人。ひとり親世帯では5割近くです。児童虐待も年々増加しています。子どもをわいせつ被害から守る仕組みづくりなども検討します。

ただ、子ども庁の具体的な姿の検討はこれからです。大事なのは個々の施策の中身と、実効性をいかに高めていくかです。組織さえつくれば即、解決、ではありません。

課題のひとつに「幼保一元化」があります。幼稚園は文科省、保育所は厚労省の管轄です。一元的な対応は就学前の教育充実や待機児童問題の解消に役立つとの声がありますが、実現していません。

中辻さん「少子化に有効な対策はあるのでしょうか」

長年の少子化で、親となる世代は少なくなっています。出生率が少し上がっても、子どもの数はなかなか増えません。子どもが健やかに成長できる環境を整えるため、あらゆる手を打つ必要があります。それには財政的な裏付けが欠かせません。子ども・子育てに関係する公的な支援を示す「家族関係社会支出」が国内総生産(GDP)に占める割合を見ると、欧州諸国の多くは3%前後ですが、日本は1%台です。財源をどう確保するかは大きな課題です。

内閣府が20年度に欧州3カ国と日本で「子どもを産み育てやすい国だと思うか」と聞いたところ、欧州では「そう思う」が77~97%だったのに対し日本は38%で、10年前の同様の調査から14ポイントも低下しました。「子育ては家族の問題」という意識はなお強いです。これが若い世代を孤立させ、子育てを困難にしています。財源確保のためにも、社会全体で子どもを支えるという意識が重要です。

ちょっとウンチク

男性の役割、より重要に

少子化を食い止めるカギのひとつが、男性の育児だ。「少子化」を初めて取り上げた1992年の国民生活白書もすでに、男性の育児と長時間労働の見直しなどを訴えていた。父親の家事・育児時間が長いほど、2人目以降の子どもが生まれるとの調査もある。

6月、育児・介護休業法が改正された。社員に取得意向を確認することを企業に義務付け、より柔軟にとれる男性向け育休も新設される。いまの男性の育休取得率はわずか7.48%。取ろうとしてハラスメントを受けるケースも少なくない。「育児は女性」という職場の意識と働き方も問われている。(編集委員 辻本浩子)

■今回のニッキィ
中辻 真由さん ごみ焼却場の設計をしているが、現在は育休中。新型コロナ拡大前はジムに通いマラソンもするなど、体を動かすのが好き。「現在はオンラインでヨガのレッスンを受けています」
伊藤 美樹さん IT(情報技術)関連企業で国内外の金融機関向け新事業開発を担当。現在は育休中で近く職場復帰する予定。「復帰に向けて、育児の合間に財務などの勉強をしています」

[日本経済新聞夕刊 2021年6月28日付]

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