とっさの言葉から始まったサンプルリターン計画

共同計画のはずが、NASAが小惑星ランデブーを単独で実行する、と言い出した。

7回目か8回目の研究会でした。NASA側が「小惑星ランデブーの計画を申請する」と言い出したのです。手堅い計画で科学的にも世界初の成果が見込める点に興味を引かれたのでしょう。実際に予算がつくだろうという話でした。予算規模で日本の10倍以上もあるNASAに先をこされては、日本はとても対抗できません。

彗星の計画はNASAの発案ですが、小惑星ランデブーは日本の若手が考えたオリジナルです。NASAともあろうものが、初心者の計画を横取りするのか。そう思った私は思わず「それならば私たちはイオンエンジンで小惑星を往復し、試料を持ちかえるサンプルリターンをやる」と言い返したのです。

NASAの研究者たち、そして世界中の研究者からも、当時もその後も「野心的で挑戦的なよい計画だ」と言われました。NASAから見てもすぐに実現するのは難しい挑戦だったのです。冷静に判断すれば、惑星探査初心者の日本には「背伸びしすぎ」といえる計画だったでしょう。

私自身にも目標になる小惑星などの根拠があったわけではありません。しかし、この時の私の乱暴とも言える発言がはやぶさのプロジェクトにつながります。背伸びや生意気でも挑戦する心を忘れてはいけないと思うのです。

[日経産業新聞 2020年5月12日付]

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