東京から鹿児島まで鈍行列車での旅

ROCKETは体験型のプログラムが多い。詳しいガイドがいないまま、子どもたちは試行錯誤しながら学んでいく。あるミッションでは、子どもたちは東京駅に集まるやいなや、JRの最南端を通る線路がある、鹿児島県枕崎に向かうよういきなり指示を受けた。しかも鈍行列車を乗り継ぎ、1日1000円のお金で6日以内に到着せよという。さらに、携帯電話や本など、暇つぶしになりそうな道具はすべて取り上げられてしまった。

子どもたちは狭い車内でケンカをしたり、新しい遊びを考えたり、何もない時間を過ごしていく。道中に知り合った人と仲良くなり、「武勇伝」を聞かせてもらうこともあった。ようやく終着の枕崎駅に着くと、先回りしたディレクター(ROCKETの指導役)が、疲れ果てた子どもたちにこうたずねるのだ。「現代の日本で失われたものはなんだと思う?」

答えを明かすと、それは「遠さの感覚」だという。利便性が向上し、効率を求めてスピードアップする現代社会。普段は時間に追われている子どもたちに、あえてムダな時間を費やさせることで、そうしないと得られないリアルな手間や距離感を味わわせているのだ。効率優先や目的重視の考え方では、学びがつまらなくなるというROCKETの価値観が垣間見える。

49のミッションを読み終えたら、いよいよ残るは最後の1つ。そこには「この本のカバーをはずせ!」と書いてある。なるほど今度は読み手にこそ向けられた「指示」だ。急いでカバーをめくると……。驚きのメッセージは、ぜひ実物の本で確かめてほしい。

今回の評者 = 安藤奈々
情報工場エディター。8万人超のビジネスパーソンに良質な「ひらめき」を提供する書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」編集部のエディター。早大卒。

学校の枠をはずした: 東京大学「異才発掘プロジェクト」の実験、 凸凹な子どもたちへの50のミッション

著者 : 東京大学先端科学技術研究センター中邑研究室
出版 : どく社
価格 : 2,200 円(税込み)

ビジネス書などの書評を紹介