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趣味サークルやワークショップも社会的処方の受け皿になり得る(写真はイメージ)=PIXTA

趣味サークルやワークショップも社会的処方の受け皿になり得る(写真はイメージ)=PIXTA

市役所で働く友達から「社会的処方」という言葉を教えてもらったわ。処方というから医療の専門的な話のようだけど、社会的っていうことは、わたしたちの生活にも関係してくるのかしら。

最近、耳にすることが増えた「社会的処方」とは何かについて、深田武志編集委員が佐々野綾子さんと斉藤嘉子さんに解説した。

佐々野さん「難しそうな言葉ですが、どういう意味ですか」

簡単にいうと、なんらかの病気や問題を抱える人に、薬ではなく、地域の同好会など社会的なつながりや活動を紹介(処方)するなどして治療しようという試みです。

例えば頻繁な飲酒や偏った食生活で糖尿病になった人がいるとします。薬による治療も必要ですが、根本的な原因を考えると、会社でのストレスだったり、孤独感だったりするのではないでしょうか。

そこを、地域コミュニティーなどを活用して解決しようというものです。英国で発達した考え方で「ソーシャル・プレスクライビング」の訳語なので、とっつきにくい感じがするかもしれません。

英国では最初の診療をする家庭医が、リンクワーカーというサポート役と協力しながら、病気の人を文化・芸術活動や同じ病気の患者団体などにつないで、治療に役立てたり、生活の質の向上につなげたりしています。背景には「健康の社会的決定要因」といって、病気には個人の要因だけでなく、孤立などの生活の環境が影響しているという学問的な知見があります。

日本でも近年、関心が高まり、昨年、政府の「骨太の方針」に取り上げられて各地でモデル事業が行われているほか、今年に入っても自民党の孤独・孤立対策特命委員会が5月20日付で出した提言で、具体的な支援策のひとつとして、社会的処方の活用を挙げました。

斉藤さん「日本も英国の制度を取り入れるのですか」

専門的な教育を受けた家庭医の仕組みや、診療報酬制度などが異なるので、海外の制度を「そのまま取り入れるのは弊害が大きい」(ニッセイ基礎研究所ヘルスケアリサーチセンターの三原岳主任研究員)という見方が多いようです。日本では地域での自発的な取り組みが先行していて、2018年に社会的処方研究所という会を立ち上げ、研究や実践に取り組んできた川崎市の医師、西智弘氏は「(幅広い人が担う)文化にしていこう」と主張しています。

自民党の特命委の提言もこうした動きに目配りし「『制度より社会化』が望ましいとの指摘がある」と、制度化によるデメリットが生じないような取り組みを求めました。

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