「やさしい日本語」 外国人技術者にもプラス

「短くはっきり最後までいう」「あいまいな表現を使わない」「動作の視点に注意する。誰が何をするかはっきり言う」--。テレワークが続くなか、コミュニケーションの齟齬が起こりやすくなっているとして、同社は昨年、ホームページに「やさしい日本語」の手引きをアップした。

コロナ禍でオンラインでの対話を支援する画面が立ち上がった。「やさしい日本語」「やさしい英語」などが説かれている

実はこれは、「手話には『てにをは』がない」とある社員が気づいたのがそもそものきっかけ。そこから、「コミュニケーションでは、どんなメンバーにも伝わりやすい表現を使おう」と提案してまとめたものが基になっている。聴覚障がい者のみならず、社内エンジニアで4割を占めるようになった外国人社員との対話でも、「やさしい日本語」が必要だという意識が少しずつ高まっていった。

ここからもう一歩進める形で、多様なメンバーに分かりやすい「インクルーシブな(包括的な)コミュニケーション」を目指す取り組みも始まった。社内ワークショップが開かれたり、語学力アップを図るチャットランチが企画されたりしている。

改めて、伝わる表現とはどういうものか。例えば、「やっぱり前倒しでやったほうがいいというか」「申し訳ないと思っているんですけど、ちょっと急ぎたいって感じで」などはNGだという。うっかり使いがちなフレーズだが、「短くはっきり」「曖昧な表現は使わない」が基本という訳だ。

障がいのある社員とのコミュニケーションで工夫したい3つ
1)会議では同じ情報が得られるように工夫を。議論のスピードは落ちても「質」が高まる
2)社内チャットツールの活用で、支援をするボランティアを募る
3)対話でもメールでも「短くはっきり」「曖昧な表現は使わない」を基本にする

「やさしい日本語」は、障がいのある社員、また日本語を学んでいる外国人社員のみならず、すべての人にとって分かりやすい表現となる。多様なメンバーが働く組織では、「相手に伝わりやすい」「理解しやすい」といった「やさしさ」をもって対話をすることが大切だろう。

野村 浩子(のむら・ひろこ)
働く女性向け月刊誌「日経WOMAN」編集長、日本経済新聞社編集委員、淑徳大学教授などを経て、2020年4月東京家政学院大学特別招聘教授、東京都公立大学法人監事。著書に「女性リーダーが生まれるとき」(光文社新書)など。