メルカリ「やさしい日本語」 多様な人材の力引き出す多様なメンバーと働く 職場の対話術(3)

脱・同質性の時代。様々なバックグラウンドを持つ人と共に働くことが当たり前となった。女性、シニア、外国人、障がいのある人、性的少数者(LGBT)、子育てや介護を担う人………。多様なメンバーが持ち味を生かしながら気持ちよく働くには、それぞれが互いの持つ背景を知り、尊重し合うための「対話」が必要だ。コロナ禍で突然迎えたテレワーク環境下、先進企業では、どんなコミュニケーションの工夫があるのか。ジャーナリストの野村浩子氏が報告する。

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第3回は、多様な人材の採用に積極的なメルカリのケースを紹介する。

障がいのある社員らとの対話から共有された、「やさしい日本語」のポイントとは。

チャット文化、コロナ禍で進化

「直接お会いするのは、8カ月ぶりですね」

「いつもオンラインで顔を合わせていたから、久しぶりという感じがしませんね」

メルカリの村山和也さん(左)と上長である東江夏奈さん。テレワークでは週1回はオンライン会議システムを活用し、1on1ミーティングでじっくり向き合う※撮影のためにマスクを外していただきました(以下同)

テレワークが続くなか8カ月ぶりに出勤して、笑顔で対面した上長との会話。実はこれは、手元のスマートフォン(スマホ)で、チャットアプリを使って入力された言葉だ。メルカリでデータ読み込み業務を担当するアノテーションチームの村山和也さんは、こうして職場で言葉を交わしている。

村山さんは聴覚障がいがある。上長である労務チームの東江(あがりえ)夏奈さんとの普段の「会話」は、ビジネス用チャットツールの「スラック」、もしくは音声入力やチャット機能のあるスマホ向けアプリ「UDトーク」を使う。

村山さんは中途入社組。前職の定型業務に飽き足らず「もっと自分を成長させたい」と、2019年にメルカリに飛び込んだ。同社への転職が村山さんにもたらしたのは、キャリア形成でのプラスだけではなかった。

スマホ向けアプリ「UDトーク」のチャット機能を使って、上長の東江さんとやりとりする村山さん(右)

「(入社してみたら)想像以上にチャット文化が浸透していて驚いた」。文字でのやりとりならハンディを感じなくて済む。職場でのコミュニケーションで疎外感を抱くことは、ほぼないという。

同社の場合、チーム内のコミュニケーションには主にスラックを活用。案件ごとに「チャンネル」が立てられ、様々な打ち合わせも各チャンネル内で進んでいく。この「チャンネル」とは、案件やテーマごとに設けられるアプリ内の「場」といったもの。各チャンネルでは、アクセス権が設定されたメンバーがメッセージやファイルを共有し合う。

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会議発言の書き起こし、スラックで依頼