洗濯物10個が一気に外せるハンガーや、引っ張り上げると次々と出てくるごみ袋など、独自の発想で多くのファンを抱えている100円ショップ「セリア」。「あったら便利」を次々とかなえていくクリエイティビティーは一体どこからくるのか。商品開発の舞台裏に迫る。

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10カ月がかりの商品開発

 「一番大切にしているのは、消費者が求めているものにどれだけ深く寄り添えるかということ」。セリア商品部課長の大野公久氏はこう力説する。消費者に寄り添う――。商品開発の基本中の基本に聞こえるかもしれないが、そこにはセリアならではの流儀がある。

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 セリアの商品開発は、市場調査で消費者のニーズを徹底的に分析することから始まる。2004年に他社に先駆けて導入したリアルタイムPOS(販売時点情報管理)システムや、独自開発した発注支援システムなど、セリアで取得している商品データを活用する。そのほか、マーケティング担当者が実店舗へ行き、商品データだけでは捉えきれない消費トレンドを探る。「ノイズのない正しいデータが取れる環境をつくって、それをもとに消費者の姿を映し出す。消費者が求めている内容に対して100%応えようという姿勢を大切にしている」(大野氏)。そこから見えてきた消費者のニーズをバイヤーが商品のアイデアに落とし込んでいく。

 セリアが扱うアイテム数は約2万点に上る一方、バイヤーはたったの8人。このメンバーでキッチン用品や文房具などセリアの全カテゴリーの商品を回している。人数が少ないようにも思えるが、商品製作を担うメーカーと日ごろから交流し、商品作りに向けたアイデアやトレンドをお互いに持ち寄ることで月間500~800アイテムもの商品を共同開発しているという。

 それぞれのバイヤーが決裁権を持っていることもユニークだ。セリアでは企画がアイデア段階から商品化されるまで約8~10カ月かかる。データを徹底分析して捉えたトレンドやニーズをいかに素早く商品化するか。そのスピード感を重視しているため、バイヤーの考えで商品化が決まるという。

新商品の売れ行き、データでどう予測?

 新たに開発した商品の生産数をどう決めるか。ここでもセリアのデータ分析力が生きてくる。過去に類似商品がある場合は、POSなどの販売データを参考に数を割り出し、工場に生産依頼を行う。

 一方、難しいのが、類似商品のない新商品を生産する場合だ。そうしたケースでは工場が生産できる最低限のロット数(ミニマム)で生産依頼を行う。だが、もし想定以上の売れ行きで店頭の商品が足りなくなったら販売機会の損失にもつながる。

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