躍進! 100円ショップ マーケティング

2020年度の市場全体の売上高が過去最高を更新し、コロナ禍で躍進する100円ショップ業界。デフレに強く“不況の申し子”とも呼ばれるが、業界を見渡すと新たな時代への胎動も始まっている。最も注目すべきが業界最大手の大創産業(広島県東広島市)が渋谷にオープンした新業態「Standard Products」だ。

渋谷マークシティ1階にオープンした大創産業の「Standard Products」。同じフロアにはダイソーも出店している
渋谷マークシティ1階にオープンした大創産業の「Standard Products」。同じフロアにはダイソーも出店している

 コロナ禍による巣ごもり需要や外出自粛、テレワークなどを背景に、キッチン用品や日用品、文房具といった雑貨のニーズが急拡大。長らく続くデフレや消費者の節約志向も追い風にし、100円ショップが業績を伸ばし続けている。

 2019年度の100円ショップの業界売上高は8722億円(帝国データバンク調べ)。コロナ禍の波に乗った2020年度は過去最高を更新することがほぼ確実で11年連続で増加する見通しだ。

 まずは100円ショップの主なプレーヤーを紹介しよう。業界トップは言わずと知れた大創産業。100円ショップ「ダイソー」を全国に3620店舗(21年2月末時点)展開しているほか、18年からは300円ショップ「THREEPPY(スリーピー)」(108店舗)を手掛けている。21年4月には大阪に新ブランド「Natural Coordinate(ナチュラルコーディネート)」も出店した。

 ダイソーが取り扱う商品数は約7万6000点。大型店では食品からデジタル用品、釣り道具までありとあらゆるものがそろい、規模の大きさで他の100円ショップを凌駕(りょうが)している。また、21年5月12日には個人向けECにも進出。ダイソーの商品を1個単位で購入できるオンラインショップ「DAISOネットストア」を東京都、千葉県、神奈川県を対象(21年6月1日時点)にプレオープンした。

21年5月にプレオープンした「DAISOネットストア」。まとめ買いが対象の「DAISOオンラインショップ」とは異なり、1個単位から商品を注文できる
21年5月にプレオープンした「DAISOネットストア」。まとめ買いが対象の「DAISOオンラインショップ」とは異なり、1個単位から商品を注文できる

 続くセリアは1756店舗を展開。雑貨や食器、ハンドメイドグッズに強く、女性層の支持が比較的高いことが特徴だ。100円ショップ業界でいち早くPOS(販売時点情報管理)やセルフレジを導入。徹底したデータ分析を基にした“超効率経営”で営業利益率は10.6%(21年3月期)と他よりも群を抜いて高い(大創産業は非上場のため非公開)。21年3月期の決算では、売上高が2000億円を突破。過去最高を記録した。

 大創産業、セリア、ワッツ、キャンドゥの業界上位4社を合わせた100円ショップの店舗数は現在約7900店。これまでの“お得意さん”だったインバウンド需要がコロナ禍で消滅したにもかかわらず、店舗は5年前の1.2倍の規模に急増している。不況に強いといわれる100円ショップは今や人々の生活に欠かせない存在になっているのだ。

「Natural Coordinate」は21年4月3日に大阪にオープンした大創産業の新ブランド。ダイソーと300円ショップ「THREEPPY」が扱う商品のなかからナチュラルテイストの商品を厳選したセレクトショップだ
「Natural Coordinate」は21年4月3日に大阪にオープンした大創産業の新ブランド。ダイソーと300円ショップ「THREEPPY」が扱う商品のなかからナチュラルテイストの商品を厳選したセレクトショップだ

 しかし、100円ショップの誕生から約35年が過ぎ、各社の戦略や業界の雲行きに変化の兆しも見えてきている。

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