「サラリーマンの経費」にみる所得税の建前と実態

2014/6/19
サラリーマンにとって、税金とは「いつの間にか取られるもの」かもしれません。自分で計算をしなくていいから楽でいい、と思っていて平気なのでしょうか。青山学院大の三木義一教授に聞きました。

■年収1000万で所得税ゼロ?

――所得税の対象は、収入ではなくて所得、つまり収入から必要経費を引いた金額なんですよね。

その通りです。たとえば、売り上げが年1000万円の喫茶店があるとしましょう。この喫茶店を経営するAさんは、年収1000万円ということになります。このAさんが払う所得税が、サラリーマンで年収500万円のBさんよりも少ないとしたら、どう思いますか。年収が2倍なら、当然税金も多く払うべきだ、と感じるかもしれません。

でも、よく考えてみてください。喫茶店で売り上げが年1000万円ということは、仕入れの代金や人件費といった必要経費を差し引いていくと、おそらくほとんど利益はないでしょう。もし経費が1000万円以上かかっているなら、所得はゼロなので所得税は課されません。一方で、サラリーマンの収入にはそれほど経費はかかりませんから、Bさんは所得税を払います。Aさんの方が所得税が少なくても、おかしくないのです。

――サラリーマンが経費を意識することはあまりありませんね。

サラリーマンで、自分の給与明細をきちんと見て、差し引かれている税金が正しい金額かどうか確認しているような人はほとんどいないでしょう。日本の税制では、サラリーマンは税金のことを考えなくてもいいようにされてしまっているんです。

先ほどの例でいうと、店を持つAさんは事業所得者、サラリーマンのBさんは給与所得者として扱われます。事業所得は収入から必要経費を差し引いて求めますが、給与所得の場合は経費を引くことが認められていません。

その代わり、経費などに相当するとみなされる金額が収入に応じて決まっていて、それを収入から引くという仕組みになっています。これが「給与所得控除」です。グラフの通り、年収300万円なら108万円、年収500万円なら154万円です。

日本は本来、申告納税制度ですから、誰もが自分の経費を計算して所得税を払い、その機会に税と社会のことをきちんと考えて積極的に意見を言うのが理想です。

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