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有機農業が農地に占める比率は現状で1%に満たない(写真はイメージ=PIXTA)

有機農業が農地に占める比率は現状で1%に満たない(写真はイメージ=PIXTA)

化学肥料や農薬を使わない有機農業が注目を集めているそうね。農林水産省が有機農業を推進する方針を打ち出したと聞いたけど、どういう事情があったのかしら。

有機農業が求められている背景について、吉田忠則編集委員が佐々木美和さんと阪上綾子さんに解説した。

佐々木さん「農水省が有機農業の推進に力を入れ始めたそうですね」

有機農業に対し、農薬や化学肥料を使って作物を育てることを「慣行農業」と呼びます。日本ではほとんどの農家が慣行農業を行っています。そのほうが効率的で収穫量も多いからです。農水省も慣行農業を念頭に置いて農業政策を進めてきました。

ところが5月に決めた「みどりの食料システム戦略」で、2050年までに有機農業が農地に占める比率を25%に高める目標を掲げました。現状は1%未満です。

「みどりの戦略」は環境に配慮し、持続可能な農業を実現するのが目的です。化石燃料を使わない栽培施設や農業機械の開発、農薬の使用量の削減など多くの目標を打ち出しましたが、中でも大胆なのが有機農業の推進。抜本的な政策転換と言えます。

阪上さん「なぜ農水省は方針を転換したのですか」

国連の定めたSDGs(持続可能な開発目標)が象徴するように、世界では環境配慮型の産業への移行が大きなうねりになっています。

農薬は病害虫や雑草の発生を防いでくれる半面、生物の多様性を損なう恐れがあります。化学肥料の一部は製造時に化石燃料を必要とするため、温暖化ガスの排出抑制という目標と矛盾します。

こうした中で、国際的な主導権を握ろうと動き出したのが欧州連合(EU)です。30年に有機農業の比率を25%に高めるという目標を20年に決定しました。米国もバイデン政権が農業の脱炭素化の方針を表明しており、中国も積極的です。

21年は環境問題や生物多様性に関する国際会議がいくつも予定されており、9月には国連食料システムサミットが開かれます。農水省の政策転換はそうした動きを視野に入れ、日本の姿勢を明確にしておく必要があったためと考えられます。

佐々木さん「50年に25%とは遠い先の目標に見えます」

それでも相当に高いハードルと考えるべきです。有機農業が盛んな欧州などと違い、日本は農地に占める比率が18年時点で0.5%にとどまります。温暖で湿度の高い日本の気候のもとでは病害虫や雑草が発生しやすいからです。

環境問題への関心が高い農家は1970年代ごろから有機農業に取り組んでいます。一部の研究者も栽培方法の研究などで応援してきました。にもかかわらず広い農地で効率的に有機農業ができる技術は確立していません。

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