コロナで視界不良の航空業界 人員減に頼らぬ翼の矜持『コロナ後のエアライン』

新型コロナウイルス禍の航空業界が苦境にあることは容易に想像できるだろう。だが本書『コロナ後のエアライン』を開くと、現状は苦境を超えて「壮絶」そのものだ。

全日本空輸(ANA)、日本航空(JAL)の2大キャリアの国際線は、フライトが2019年比で9割以上減少。国内線は「GoToトラベル」でわずかに回復したものの、その後の緊急事態宣言の再発令でまたしても需要減に直面した。21年3月期連結決算では、ANAホールディングスは4046億円、JALは2866億円といずれも巨額の最終赤字を計上している。

本書では、大手2社を中心に、格安航空会社(LCC)や海外エアラインも含め環境が激変する実態をリポートし、コロナによる影響の深刻さをあぶり出している。それとともに、各航空会社の生き残りを賭けた新しい取り組みも紹介し業界の未来像を描く。著者は航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏。

客室乗務員を異業種へ出向させる

乗客がいつ戻ってくるかは、3カ月先ですら読めない状態が続く。インバウンド(訪日外国人)需要や東京五輪・パラリンピック開催で右肩上がりの収益を見込んでいた航空業界にとって、生死を分ける状況であるのは間違いない。だが、手をこまぬいているわけではない。

とくにANAは、非航空事業の収益化にいち早く乗り出している。航空券の予約だけでなく、ツアー商品やホテルやレストラン予約、ショッピングなどができるスーパーアプリを活用し、プラットフォームビジネスを展開する意向だという。また、宅配向けに販売する機内食も想像を上回る人気を博した。「ビーフハンバーグステーキ」や「紅鮭の彩り御飯」といった、国際線エコノミークラスと完全に同じ冷凍の機内食である。自然解凍してレンジで温めれば食べられるため、会社でランチボックス代わりに利用するケースもあるそうだ。

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「人」が支えるエアライン
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