軌道設計を担当して、88年に1回目のスイングバイを行いましたが、結果は失敗です。ふたたび地球に戻って2回目のスイングバイを行うためには精密な軌道制御が必要でしたが、2回目のスイングバイを行う軌道に乗せられなかったのです。

当時は技術も未熟で探査機の状態も万全ではなかったので「しかたがないか」という思いでした。しかし後になって「本当に極限までがんばったか」という思いが強くなりました。このときの悔いが後の探査機やはやぶさの取り組みにつながりました。

軌道制御技術で自信つける

90年に打ち上げた工学実験衛星「ひてん」でも軌道設計を担当。軌道を操る技術を深めた。

ハレー彗星を探査した「さきがけ」と「すいせい」は日本にとっては初めての惑星間探査機で、軌道制御の技術という点ではいわば練習のようなものでした。初めて軌道を正確に操縦する技術を試みたのが、米ソに次いで月を周回した「ひてん」です。

92年に地球の磁場を観測する人工衛星「GEOTAIL」の打ち上げを予定していました。地球から見て太陽と反対側に伸びる地球磁気圏の尾部を正確に捉えて観測するには、繰り返して軌道を変えていく必要があります。ロケットを噴射して軌道を変えることもできますが、それには大量の燃料が必要です。スイングバイで軌道を制御すれば燃料を使う必要がなく、その技術の習得がひてんの目的でした。

ひてんでは月を利用した二重スイングバイや地球の大気を利用してブレーキをかけるエアロブレーキなど、様々な軌道制御技術を試しました。この軌道設計を担当したことで多くのノウハウが蓄積でき、軌道を自由に操作できる自信がつきました。

[日経産業新聞 2020年4月30日付]

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