2021/5/27

トップストーリー

ちなみに、ニワトリは注射をするとストレスで卵を産まなくなることが多いが、ダチョウは何も感じず卵を産み続けるらしい。本書ではこうしたエピソードが満載で、塚本氏が「ダチョウはアホなんですわ」というゆえんなのだが、それは、もちろん、いうまでもなく関西人なりの愛情表現である。

迅速、大量、安価に抗体を生産できる方法を確立した塚本氏は、鳥インフルエンザ、エボラ出血熱などさまざまな感染症に対応してきた。本人いわく、今回の新型コロナウイルスへの抗体の生産では世界で一番乗りの快挙を達成した、という話だ。

技術を迅速に役立てる「カジュアル・イノベーション」

学問の成果はビジネス化して世の中に役立てるべき。だが、ワクチンや医薬品の開発には巨額の費用や薬事法承認の高いハードルが立ちはだかる。それならばマスクや化粧品の製品化を目指す方が、結果的に迅速に安く世の中の役に立てるのではないか、というのが塚本氏が提唱する「カジュアル・イノベーション」の考え方だ。

塚本氏が構想するカジュアルな製品のアイデアは、薄毛や花粉症の対策から、果ては媚薬にまで広がっていくのだが、真骨頂は製品化済みの「ダチョウ抗体」入りのあめちゃんだろうか。大阪のおばちゃんの代名詞でもあるあめちゃんをオマージュしたものだ。あめちゃんの中にダチョウ抗体と一緒に配合されたユーモアこそ、いま多くの人を癒すのではないかと思うのだ。

今回の評者 = 戎橋昌之
情報工場エディター。元官僚で、現在は官公庁向けコンサルタントとして働く傍ら、8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。大阪府出身。東大卒。

ダチョウはアホだが役に立つ

著者 : 塚本 康浩
出版 : 幻冬舎
価格 : 1,540 円(税込み)