付箋50枚で魅力を深掘り 『anan』編集者の言葉選び『なぜか惹かれる言葉のつくりかた』

「映画から夢が広がった、大切な僕の宝箱」。映画『ニュー・シネマ・パラダイス』のキャッチコピーだ。こうした魅力的な文句やリード文のことを、映画や雑誌の世界では「惹句(じゃっく)」と呼ぶ。

本書『なぜか惹かれる言葉のつくりかた』は、数々の惹句を世に出した凄腕編集者が、読み手をひきつける言葉づくりのコツを教える指南書だ。著者の能勢邦子氏は女性誌『anan』(マガジンハウス)の編集長や情報誌『Hanako』(同)の副編集長を務めた人物で、ミリオンセラーになった『ザ・トレーシー・メソッド』(同)をはじめ多くの話題作を手がけてきた。

披露されるのは言葉の選び方や磨き方など作文術にとどまらない。そもそも魅力あるコンテンツをどのようにつくっていくかという「ものづくり」の視点で、手厚いレクチャーがなされている。文章を書くためだけでなく、企画を発想したり新商品をPRしたりする場合に、本書のノウハウが活用できそうだ。

「売り」を見つける

著者が重視するのは、コンテンツの「売り」を見つけるということだ。どの情報を、誰に、どのように魅力的に伝えるか、を見極めることが惹句づくりに欠かせないと説く。

例えば、「歴史あるホテル」といった場合、このままではコンテンツとして価値があるとは言えない。そこで、どんな歴史があり、歴史の中でどんな役割を担ってきたかを徹底的に調べていく。すると「ジョン・レノンが定宿にしていた」という売りが見つかる。売りが見つかればそこからサービスや商品を展開できる。本書ではジョン・レノンを追体験するプランや、食べたオムライスの再現など、インパクトのあるアイデアが提案されている。

対象についての情報を多角的に調べ、自身が納得する売りを見つけること。これを著者は「コンテンツに誠実に向き合う」と表現する。コンテンツを掘り下げ、価値を見出して言語化していく作業が、書くことに先立つのである。

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