「足元ばかり見るな」の言葉

父親の影響で科学に興味を持った。ラジオなどの電子工作や望遠鏡作りなどに熱心に取り組んだ。

父は私たち兄弟に子供向けの科学雑誌や本をよく買ってくれました。また父が購読していた米国の科学雑誌もあり、内容は分からなくても写真などを飽きずに眺めていました。そうした雑誌や本を読んで、電子工作や望遠鏡作りといったことに興味を持つようになりました。

望遠鏡を作ったのは小学5~6年生の時です。父も子供の頃に作ったと聞き、それならば自分も作ってみようと思ったのです。作るといっても今のように簡単な組み立てキットがあるわけではありません。まずレンズを購入し、レンズにあったパイプをさがして筒の部分を作ります。

父は望遠鏡を作っている私に口出しはせず、「ここが分からない」と聞いたときに初めてどうしたらうまくいくかを教えてくれました。今になって思うと、まず自分で考えるという習慣を身につけさせたかったのではないでしょうか。

数日かかって口径50ミリメートル、倍率100倍の小型望遠鏡が完成しました。手作りの望遠鏡で見た月には感動しましたが、すぐに月や星を見ることには飽きてしまいました。工作は好きでも、天体観測にはあまり興味がなかったようです。

子供の頃に父から言われた「足元ばかり見るな。時には頭をあげて上を見ろ」という言葉は忘れられません。既存の技術が完璧にできているかを点検するだけでは、新たなページを開くことはできません。「はやぶさ」で世界で初めて小惑星からのサンプルリターンに取り組んだ原点はここにあると思います。

[日経産業新聞 2020年4月23日付]

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