ハラスメントはこれで解決 頼れる上司の話術にヒント『一流の人は知っている ハラスメントの壁』

2020年6月、大企業に対して、改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)が施行された。中小企業でも2022年4月から施行される。世の中はますますハラスメントに敏感になり、職場でのコミュニケーションに頭を悩ます人も増えているようだ。

ハラスメント問題がやっかいなのは、これは絶対にセーフ、アウトといった明確な答えがないためだろう。では、どうすればハラスメントを避けることができるのだろうか。

相手の性別や年齢、容姿について言及しない、身体接触しないなど、自分の言動に注意することが重要なのは言うまでもない。それに加え、ハラスメントになるか否かは、相手との関係性が大きく左右すると説くのが、本書『一流の人は知っている ハラスメントの壁』である。

著者は、人財育成コンサルタント・上司向けコーチの吉田幸弘氏。経営者や中間管理職向けに、人材育成やチームビルディングのサポート業務を行っている。企業や官公庁の講演、研修に登壇し、受講者数は3万人を超える。

信頼関係の有無が明暗を分ける

ハラスメントかどうかを決めるのは相手側である。本書によれば、境界線は「信頼できる上司かどうか」だという。つまり、部下と信頼関係ができていれば、良かれと思って発した言葉がハラスメントとして受け取られる、といったことは起こりにくくなるのだ。

本書には信頼を積み重ねるためのコツが紹介されている。例えば、指示がわかりやすい上司は、それだけで好感を持たれる。そこで著者が勧めるのは、5W3H(When, Who, Where, What, Why, How, How much, How many)で指示を出すという方法だ。相手もわかっているはずという考えを捨て、上記の観点で多角的、具体的に伝えるよう心がける。

ちなみに、部下に指示を出すときに「なぜ、あなたに仕事をお願いするのか(Why)」を明確にすると、相手は頼まれ事を「自分ごと」として捉え、高い意識をもって取り組むようになる。普段のコミュニケーションに「なぜ(Why)」をプラスすれば、互いに気持ち良く仕事が進められそうだ。

問い詰めるとハラスメントに

だが同じ「なぜ」でも使い方次第ではハラスメントになりうるので要注意だ。例えば頼んだ仕事が締め切りまでに仕上がってこないとき、「なぜ間に合わなかったんだ?」と問い詰めてはいけない。度が過ぎると、ロジックで相手を追い詰める「ロジック・ハラスメント」になるかもしれないからだ。

ビジネスパーソンにとって論理的思考は欠かせないが、「なぜ」で問い詰められると相手は責められているように感じるという。こういう場合は「間に合わなかった原因は何だろうか?」と出来事に焦点を当て、いったん本人の責任と切り離して考えてもらうようにするといい。

最近は、私室の様子を話題にするリモートワーク・ハラスメントなど、新たなハラスメントも誕生している。これからの時代、何がハラスメントになるかわからない。だからこそ多少突っ込んだ発言をしても受け止めてもらえるような、信頼される上司を目指したい。

今回の評者=川上 瞳
情報工場エディター。大手コンサルティングファームの人事担当を経て、書評ライターとして活動中。臨床心理士、公認心理師でもある。カリフォルニア州立大学卒。

一流の人は知っている ハラスメントの壁 (ロング新書)

著者 : 吉田 幸弘
出版 : ロングセラーズ
価格 : 1,210 円(税込み)

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